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ミラボー橋


ミラボー橋

                      ギョ-ム アポリネェル   堀口大學 訳

 
   ミラボー橋の下をセーヌ河が流れ
      われらの恋が流れる
     わたしは思い出す
   悩みのあとには楽しみが来ると

      日も暮れよ、鐘も鳴れ
      月日は流れ、わたしは残る

   手に手をつなぎ顔と顔を向け合おう
       こうしていると 
     われ等の腕の橋の下を
  疲れたまなざしの無窮の時が流れる

      日も暮れよ、鐘も鳴れ
      月日は流れ、わたしは残る

   流れる水のように恋もまた死んでいく
      恋もまた死んでゆく
     生命ばかりが長く
   希望ばかりが大きい
                                    

      日も暮れよ、鐘も鳴れ
      月日は流れ、わたしは残る

   日が去り、月がゆき
       過ぎた時も
     昔の恋も 二度とまた帰って来ない
   ミラボーー橋の下をセーヌ河が流れる
 
      日も暮れよ、鐘も鳴れ
      月日は流れ、わたしは残る

                  詩集「アルコ ール」(1913)
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 

 
    ミラボー橋のしたセーヌは流れ
      そしてわたしたちの恋も流れる
     せめて思い出そうか
    悩みのあとには喜びが来ると
 
     夜は来い鐘は鳴れ
     日は過ぎ去ってわたしは残る
 
    手と手をとり向きあって
      こうしていると
     わたしたちの腕の橋のした
    永遠の眼差しのあんなにも疲れた波が通って行く
 
     夜は来い鐘も鳴れ
     日は過ぎ去ってわたしは残る
 
    恋は過ぎ去るこの流れる水のように
      恋は過ぎ去る
     何と人生の歩みはおそく
    何と希望のはげしいことか
 
     夜は来い鐘は鳴れ
     日は過ぎ去ってわたしは残る
 
    日が経ちいくつもの週もまた
      過ぎた時も
     恋ももうもどって来ない
    ミラボー橋のしたセーヌは流れ
 
     夜は来い鐘は鳴れ
     日は過ぎ去ってわたしは残る

                                   飯島耕一 訳
 
               青土社版『アポリネール全集』第一巻




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

若い頃からお酒は吞めず、言葉に酔っ払っていました。

美味しいと思えたら、どんどん吞めたなら、りっぱなアルコホル中毒者になっていたと思います、控えて飲まなかったわけではありませんので。

吞めていたらあったかもしれないこと、吞めなかったからある、今のいろんなこと。

・・・このアポリネールという詩人。ファンの多い画家の、あのマリー・ローランサンの恋人だった時期があり、その恋に破れたあと、書いた詩だということです。

アポリネールは30代後半で死に、ローランサンは70代まで生きた。

     日が去り、月がゆき
               過ぎた時も
           昔の恋も 二度とまた帰って来ない

まことシビれました、こけし顔だった、黒い髪がうるさいほど多かった、かつての私は。

あれこれ経てきた今のわたしも、やはり、いいなあと、ゆる~くシビれます。。
   
ミラボー橋。

地平線


             地平線


       彼女の白い腕が

       私の地平線のすべてでした。

                     マックス・ジャコブ(堀口大學訳)

  
マックス・ジャコブ
1876年7月12日〜1944年4月5日
フランスの詩人
ユダヤ人
アポリネールやコクトーと並び
現代詩の先駆者のひとり
画家のモディリアーニは
マックス・ジャコブの絵を二枚描いている
ナチスのユダヤ人迫害に遭い
ドランシー収容所で病死
堀口大學の訳詩で親しまれている



記憶の隅っこの方にあって、このたびコメント欄への投稿によって思い出させてもらえた、この詩。

おそらく50年もむかしにはじめて「この詩に出会った時は、菅原敏の訳詩でした。そんな気がします。


        あなたの白い腕だけが

        わたしのすべての地平線



この「腕」の主を私は、むかしむかし、男性だとうけとめました。

まだリアルな恋に触れていなかった、十代の。ヨーロッパの映画に耽溺していた当時の。肌の白い俳優たちに目が馴染んでいた頃の。

そんなだった私は、地平線であるこの「腕」を、男性だと思い込みました。

いま、改めて詩に再会して。堀口大学の訳の詩に。

そうなんだ、地平線は、彼女の腕なんだ。

そう知りました。

どちらが「好き」かは、人それぞれでしょう。

わたしは・・・どちらもいいな。どちらも素敵です。

現在の私と似かよった年齢で、この詩人が、ナチスの収容所で病没したこと。そのことも知って。

重い苦い気持ちにもなりました。


海の響きを




          「耳」


    わたしの耳は 貝の殻

       海の響きを懐かしむ


                 ジャン・コクトー       堀口大学 訳





あきのひの

わすれなぐさ


        ヰルヘルム・アレント
        上田 敏 訳


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  ながれのきしのひともとは、
  みそらのいろのみづあさぎ、
  なみ、ことごとく、くちづけし
  はた、ことごとく、わすれゆく。

       

   落葉


              ポオル・ヴェルレエヌ
              上田 敏 訳

  秋の日の
  ヴィオロンの
  ためいきの
  身にしみて
  ひたぶるに
  うら悲し。

  鐘のおとに
  胸ふたぎ
  色かへて
  涙ぐむ
  過ぎし日の
  おもひでや。

  げにわれは
  うらぶれて
  こゝかしこ
  さだめなく
  とび散らふ
  落葉かな。


                 「海潮音」より



ながれきにけり

京の五山の送り火を、テレビに眺めて。今年は奈良の万灯籠にも行きませんでした。

ばたばたと自分なりに忙しかったお盆の行事も済ませることができました。

豆腐や冬瓜や茶がゆや揚げさんや。病人食みたいな和のごはん、びっくりするようなお値段ですが、お盆休みの終わりの日に、落ち着けるその店でいただくのが、習慣のようになっています。若いころはまるで物足りなくて、その「禅ご飯(笑)」解散後に、肉を食べに行ったりもしました。

今はもう、お腹と気持ちをじんわりとぬくめてくれる茶がゆの美味しさを、夏の終わり近くの味の記憶として(大層ですが)家に持ち帰るようになりました。


このごろ、美味しいかき氷を出してくれる店が増えたように思います。

もう、今はむかし、の話になりますか。

奈良の三条通(JR奈良駅から春日大社までまっすぐな道)に、客が三人も入ればいっぱいの、小さな小さな甘味処がありました。

ご夫婦で、かなりのお歳になられるまで営んでおられたその店の、かき氷が、なんともふんわりと美味しかった。

いつも小倉抹茶を頼んでいました。卓は、かき氷とスプンを載せた小さなお盆のほかは何も置けないサイズ。年代物の四角い椅子は、私には窮屈なものでしたが、時々、通りかかった時にふらりと入って、注文をして、透明な氷の塊りが、シャッシャッシャッと削られて行く音を楽しみ、明治のガラスみたいな古風な花びら型の容器が、濃い抹茶色のシロップをかけられ、奥さまが炊かれると聞いた小豆を戴いて、運んで来られるのを、ひそかにわくわくと待ったものでした。

下戸ですが、そんなに甘いものが欲しくてたまらない、というのでもない。その店のかき氷が、好きでした。

自分の店を閉じてそのあたりを歩かなくなり、通っても車で走り過ぎるくらい、十五年が経った今では、あの甘味処はありません。


時々モーニングサービスを食べに行く珈琲店の小倉抹茶を、先日つれあいが頼んだら、ふんわりほわほわのかき氷が運ばれて来て。

先に奪ってわたしが一口食べた、美味し!。キカイのええのが出来たのか。

それから、これも時々サンドイッチを食べに行くコメダでも、頼んでみました。ここのも美味しかった。

この夏、五回くらい、かき氷に吸い寄せられました。

お伊勢参りの帰りに食べた、焙じ茶のかき氷も忘れ難し。


いまごろのうたを探していたら。


すてきな一首が見つかりました。



  ただひとつ 風にうかびてわが庭に 秋の蜻蛉のながれ来にけり

     ただひとつ かぜにうかびて わがにわに あきのとんぼの ながれきにけり

                                      若山 牧水


それと。芥川龍之介の俳句一句。


  初秋の蝗つかめば柔らかき

     はつあきの いなごつかめば やはらかき


まだ稚(わか)い、からだの固くなっていない蝗だったのですね。触感の句、さすがとうなります。

自死の少し前の句とのことです。



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やはり赤い口紅が好き。


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