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夏の朝のコーヒーと猫と

その喫茶店に、三十年以上、通っている。
毎日は行けない、名古屋の叔母のようには(叔母ちゃん、毎朝、元気です、のお知らせ代わりに、お友達との「喫茶店行こまい」習慣つづけてね)。

バス停近くの小さな商店数軒の集まりの中の、一軒。
名前、平凡。
昔のままのカウベルをちりりん、と鳴らして店内に入る、馥郁たる珈琲の薫り、と言いたいが、今の私に、薫りは無縁。
失くした腕が、神経のいたずらで痛むのを「幻覚痛」とか「幻視痛」とかいったと記憶するが、記憶はおぼろ、言いたいのはともかく、失くした嗅覚が、この店のコーヒーの香りを鼻の奥に呼び戻す、ということ
壁は、歳月と煙草の煙と、コーヒーの湯気にいぶされてセピア色。
ルノアールの少女。ミレーの田園。セザンヌのパリ近郊の風景の絵も、昔のまま。
本物みたいに落ち着いて掛けられている。

ウェイトレスは、代々、ご近所の主婦さんたちが、申し送りで勤めている模様。
練れた笑顔と丁寧な接客態度も代々の申し送りか。

切断面のきっちり立った、いささか焦げ目の強いトースト。
パンもバターも、言ってみれば業務用だろう。そういう値段。
でも、どこの、どんなトーストより、ここの、焼いた食パンが美味しい。

コーヒーは、薄い肌のカップに、たっぷりと注がれて来る。
熱い。
おいしい。
そうとしか言えない。おいしいコーヒー。

卵、わらえるくらい大きい。

以前、旅の途中のある朝、どうしてもコーヒーとトースト、と思いつめて、早朝ホテルを抜け出して探し当てた店に、若い、一生懸命に自分の店を守っています、な態度が全身から吹き零れている店主がいた。
コーヒーに、モーニング・サービスを頼んだ。
コーヒーは、おいしかった。
飲みたさが頂点に達していた時でもあり、そういうコーヒーだった。
パンは、どこから探して来た、と聞きたいほど小柄だった。
パンはいい。
卵が、とてもとても小さかった。鶉の卵より少し大きめ、な感じだった。
パンと卵は、文字通り「サービス」なのであり、文句のつけようもない。
が、経費を、きりきり、ぎりぎり、必死の上に必死できりつめようとしての、パンと卵の大きさか、と、なんとも言えない感じで、いただいて、支払いをした。
何を見てもアタマの中に「ものがたり」を作り出してしまう自分が、そういう時、疎ましい。

元の喫茶店の話。
と言うわけで、大好きな店である。
数年前、やっとローンの終わっていた家が競売にかけられることになって、出なければならなくなって、どうせなら、今までより大きな家にゆっくり住もう、と呑気に探して、今の家を借りて移った。
失くした家の倍くらい広い。
庭も広い、部屋数も多い。
当然、家賃もそれなりの提示だったが、会社が倒産してお金が無くて、でも今からやり直すのです、と、値引き交渉をしてみたら、こちらの言うがままの家賃にして下さった。大家さんありがとう。

かつてのわが家より、バスで四つ分、駅から離れたところに、今、住んでいる。

かつてわが家だった家は、今、新しい持ち主に大切にされているようだ。バスから見える。

時々、好きな店に言って、好きな味のコーヒーを楽しむ。

今朝も行って来た。

モーニング・サービスのセットはどれもステキで、店主は私と同じくらい、年を重ねていっている。

今朝は、猫の話をしていた。

帰って、洗濯機を回す操作を終えて、座ってパソを開いたら、yuutaさんが猫のことを書いておられた。



一番長く一緒に暮らしたのは、シャム猫のマミオだった。十四年、いっしょにいたな。

優しい、母性的な猫だった。

どうしろって言うのよ~。理不尽な要求に疲れて、座卓に突っ伏していると、傍に気配を感じる。
見ると、マミオが、両手をきちんとお利口に揃えて、じっと黙っている。
見上げていて涙の溢れてくる頬を、ざらざらの舌でなめてくれた。

マミオの舌は、年々、ざらざら度が少なくなって行っていたな。

晩年は、髭まで落としていた。
畳の上に、見慣れないものを見つけ、じっと見ても正体不明。
銀色の、長くて固くて、釣り針ではないし・・・猫のひげだた。

思い出は、いっぱい、いっぱい、ある。

死ぬ三日前、二メートルくらい離れたところから、黙って、じいっと、私を見上げていた。
どうしたの、と声をかけても、黙っていた。

次の日。玄関を出たすぐのところで、やはり私を見つめていた。

痩せて,背中の骨がごつごつと浮いて体の艶も失せて、私を魅了し続けた青い目の、青さも、うっすらとした淡いものになっていた。
何かの予感があった。
認めたくない予感だった。
うつむいて私は仕事にでかけた。

その次の日だ。
マミオは、玄関から車置きに出る階段の、一番下にいて、ドアを押して出る私を待っていた。
待っていた。じっと見上げて、無言だった。
涙が溢れ出て、停まらなくなった。
うぐぐ、と、声を抑えることも出来なかった。
しかし仕事に行かねばならない。

マミオの、もう、なんだかスカスカになっている体をすくい上げて、泣きながら家の中へ戻して、化粧は乱れてぐちゃぐちゃの顔のまま、奈良までのバスに乗った。

いつもの散歩コースの帰り道、家に近い電柱の陰に、ぱたりと倒れてマミオはこときれていた。
隣人の知らせに、裸足で階段を駆け下りて、抱き上げると、まだ、ぬるかった。
苦痛は無かったようで、眠っている時の表情だった。

横向きの姿のまま、箱に収めた。日曜日の朝だった。娘たちが、泣きながら花でマミオを埋めた。
私だけではない、幼い娘達に「愛する」という気持ちを教えてくれた猫だった。

まだ若い猫だった頃、花が揺れればその花にじゃれついて遊んだ、都忘れの群れるあたりに埋めてやった。

最後に見たマミオの横顔は清らかだった。

清らかだった。

yuutaさん、風ちゃんの心配しておられる時に、ごめんなさいね。
でも、思い出しちゃったの。
思い出すと停まらなくなって、もう、キーボードの上に鼻水垂れそうだから、自粛します。
風ちゃんは、幸せ猫だと思いますよ。
名前がいいね。覚えたから、もうずっと、私の中にもいますね、風ちゃん。

   すこしづつ覚悟うながし その果てに 逝きたり
   われを 愛しくれしか




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  1. 2011.07.27 (水) 15:14
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No title

こんにちは KUONさん

マミオちゃん。。。
お外に出してたんですか
お散歩の途中?

うちは ヨン匹 かつて 同居してました

それぞれ 見送りました

あれから 12年くらい
可愛く 心に寄り添う わがままな 生き物を
もう 同居する事はないと思います
飼っていた 実家の両親も 二人になった今も 飼おうとは思わない様子

やはり 見送るのは辛い

その 勇気までも問われるのだと 失ってから解りました。。。

飼う時にも きちんと世話が出来るか?
生き物なのよ!
母に言われましたが
それより きちんと見送れるの?
最期まで 看取ってあげられるの?

もし 子供達が ペットを飼おうと言ったら そう 言い聞かすつもりでした

が!アレルギーで 飼えませんでした。。。

永遠は 無いから だから
生きている時間が 愛おしいのですね

風ちゃん お幸せですね
こんなに 慈しんで頂いて
そういえば!
姪は 楓と書いて[ふう]と 読ませます♪
向田邦子さんちの猫は
[マミオ]だったと記憶しています

ただ それだけの事なんですよ。。。

また 蒸し暑い毎日が 戻って来ちゃいましたね
ご自愛下さいませ♪
ごきげんよう♪

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プロフィール

KUONの久遠

Author:KUONの久遠
     ・・・・・・・・・・・・・・

四十年以上住み慣れた奈良の地を離れ、海の近くへ越してまいりました。

海の見ゆる高層の部屋に耳遠き
夫(つま)とふたりの暮らし始むる

明確に、残生を意識します。余分なあれこれはもう要りません。
シャネルの赤いルージュは変わらず。生意気なままの私でいたい、いようと願っております。

    ・・・・・・・・・・

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