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返事の中までKUONです。

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時には誰がいても独りだ




こんばんは。

ご無沙汰して申し訳ないことです。

プチ引っ越しをのろのろしている間に、名古屋の親類の一人が、いけなくなりそうだとの連絡が入り、大急ぎで向かったり、持ち直して戻って来たり、また呼ばれたりで、忙しいゴールデン・ウィークでした。

意識が無くて機械に生かされている高齢の方の周りで、連休中に人に集まってもらう訳にはいかないとか、誰それが二度しか見舞いに来ていない、もう一度来るように言ってやるから、しばらく保ってもらわないかん、など、残る側の論理が展開されているのを、黙って聞いていました。

泊まって待て、と勧められつつ、日帰りで何往復。待てって・・・何を? と、笑いたいような、おかしな気分。

眠ったまま、苦しまず、が、何よりのことだったかな、と、今は感じています。享年、九十二歳。皆様には全く(私にもほとんど)関わりの無い方です、お悔やみのお言葉などは、謹んでご辞退させて頂きたく存じます。

延命治療は無用、苦痛だけ取り除いてもらえたら、と、望んでおられたという方の、希望が叶えられなていないことが、辛いことでした。私のように、図らずも幸運にも、根無し草のごとき傍を気にしなくて済む生きようの転がり込んで来た人間には、わかりにくいことだろうとは、思います。

毎日、自分のパソもやさいさんのお部屋もゆうたくんの寝言も見たり聞いたりしていましたが、えまさん大掃除頑張れとも念を送っておりましたが、落ち着いて座れなかったことを、お詫び申し上げます。

お返事は、ずっと頭の中で揺れ動いていた言葉たち、浮かんだり消えたりし続けていた、言葉たちを着地させることで、今夜は代えさせて頂きたく存じます。


   

   惜しくてたまらない

   あなたが

   どんな朝に生まれた?

   黄昏どきにこの世に来た?

   夜明け前だったのかしら

   覚えていない 弟よ 私は幼い姉だったの

   細いうなじ 

   眩しそうに眉をしかめて見上げる癖

   私が淋しい子どもになったあの日

   あなたはもっとさびしい子どもだった

   幼かった

   まだ必要だった

   人を信じること  当たり前の「ただいま」の声が

   ・・・帰って来なかったあの人

   体じゅうの輪郭が

   ぼやけて

   薄れてしまう心細さで

   待ったのね  弟よ  帰らないあの人を

   

   時はするすると流れて

   あなたは私より大きな弟となり

   自転車の後ろにも乗せてくれた

   カレシみたいに気遣いながら

   馴染めないカレシより心添って

   あなたの背中に隠れていられることが

   嬉しかった

   安心だった  落ち着いていられた


   さびしい心は うまく包み込んで

   ・・・そんな術も身につけて

   あなたは優しい男になった

   人を愛することを知り

   人に愛される充実も知った

   弟よ

   あなたたちは

   あなたと  

   あなたの大切な人は

   とってもビンボーだったと思うし

   霞を食べているみたいに

   どこか浮世離れして

   この世の勝ちとか負けとか

   そんなものに遠いところで、

   寄り添って

   見つめ合って

   柔らかに微笑み合って

   幸せだったのよね

   幸せそうだと見ていたの  わたし  弟よ

   私のいとしい

   たった一人の弟よ



   ・・・そういうことがあるの

   現実にそういうことがあるの  そういうことが起こって

   あなたは失った  愛する人を  おそらく世界を



   最後の時もあなたは静かだった

   何かをねだったことの無いあなたからの電話

   せがまれて  

   心が動いて  

   車を飛ばした

   あなたは嬉しがって迎えてくれた


   幼いころ

   母親の帰って来ない翳り行く部屋で

   二人分の  四枚の耳を 張りつめてひらいて  寄り添って

   何も言わず  言えず  言えば泣き出してしまいそうで

   待った  ただ待っていた

   「ただいま」の声を待った

   帰らない声をひたすらに待った

   二人だけしか知らない思いを

   分け合った弟

   そう あなたが  私を迎えてくれたのよ


   ・・・葬儀

   会いに行ったその時のままの服装で

   あなたを見送った

   弟よ  突然過ぎた  いきなりすぎた  

   涙なんか出なかった

   悲しいもびっくりも

   心は  石になっていた  

   なぜって聞くひとには

   答えようがない

   答えてもわからないでしょうね

   涙が出ないわけなど

   ただあなたを失ったの  それだけが事実だった

   事実だけが事実だった

   
   わたしの

   たった一人の弟よ  もういない弟よ

   あなたが惜しい

   うつむきがちに見せた柔らかい笑顔

   惜しくてたまらない

   あなたが得られなかった図々しいような幸せの  種類

   あまりにも早く逝ってしまって

   厚かましく  幸せの権利を囲い込む

   そんなこともようしなかった

   不器用といえばそれだけのこと

   柔らかく折れてしまった

   そうしないでいられない悲しみや辛さを

   抱え込んでいたあなたの

   早い晩年が  悔しくてしかたない

   みんな  多くの      誰もが当たり前に手にしている

   いろんな幸せの種子を

   芽吹かせることもなく

   私に最後の笑顔を見せて

   ふっと消えてしまった  弟よ

   私にしかわからない

   私だけが知っていた弟よ

   今年の五月の風の色も

   若葉の匂いも


   去年の夏の光も

   おととしの冬の陽だまりの匂いも

   知りようのない弟よ  とっくにいなくなってしまっている弟よ

   もう会えない  どこにもいない弟よ

   ・・・時々ね

   会いたい  すごくすごく会いたいの

   どうしても会いたいの  どうして会えないのかわからなくなるの

   ・・・どうして会えないのだろう

   地団太踏んで  会いたい会いたいと喚きだしたいことがある

   そうしても  どうしても  会えないの


   あなたを惜しまないように見える人を  時に  疎む

   あなたのような息子を  生んだのに  生めたのに

   その幸運がわかっていなかった  いまもわかっていない気がして

   そのことだけで憎めるくらい  苦しいの

   あなたはもう  苦しさも憎しみも無いところにいる

   そんなこともたまらない  優しかった弟よ

   惜しい  惜しくてたまらない

   あなたのいのちのみずみずしさが

   何かのたびに  思われて

   惜しい
   
   会いたい
   
   声を聞きたい

   聞きたい







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  1. 2012.05.06 (日) 20:13
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  3. やさい
  4. [ edit ]

歳を取らない弟

KUONさん  
ありがとう。

弟の「姉ちゃん」と呼ぶ声が耳鳴りのように聞こえます。
弟のうつむいた顔と横顔を、幻のように思い出します。

なのに、どういうわけか、
弟の正面からの顔を思い出せなかったんです。
正面をむいて、私と向かい合っている顔は笑ってるはずなのに。

ありがと、今夜は、思い出せそうです。

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プロフィール

KUONの久遠

Author:KUONの久遠
     ・・・・・・・・・・・・・・

四十年以上住み慣れた奈良の地を離れ、海の近くへ越してまいりました。

海の見ゆる高層の部屋に耳遠き
夫(つま)とふたりの暮らし始むる

明確に、残生を意識します。余分なあれこれはもう要りません。
シャネルの赤いルージュは変わらず。生意気なままの私でいたい、いようと願っております。

    ・・・・・・・・・・

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