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やきほろぼさむ あめのひもがも

およそ4500首ものうたが集められている万葉集の中に、狭野茅上娘子 さののちがみおとめ
という歌人がいます。 さぬのちがみのおとめ、と表記されることもあります。生没年未詳。

蔵部(後宮十二司の蔵司か)の女嬬・斎宮寮の掃除などをする下流女官の一人でした。

女官ですので、天皇の目にとまれば妃になる可能性のあるひとだったわけです。それが、中臣宅守と出会い、夫婦の契りを結んだ。「天皇のおんな」未満でも宅守は、越前への流罪に処せられてしまいました(正式の罪状は不明です)。

奈良・平城京から流刑地の越前(福井県)までは、奈良山を越えて山城国(京都府)に入り、さらに逢坂山(大阪府)を越えて近江国(滋賀県)に進み、琵琶湖西岸を北上して愛発(あらち)山を越えるというルートを取ったものと推測されます。すべて徒歩の旅でした。いったん別れてしまえば、またの日はあるのか、あるとしてもいつごろのことか。

結ばれて間もない若い夫婦の、離別の際のうたが、万葉集巻十五に収められています。
茅上娘子の万葉集への収載歌は、全部でいえは二十三首ですが。

「中臣朝臣宅守の、蔵部の女嬬狭野茅上娘子を娶(めと)る時、勅して流罪(るざい)に断じて、越前国に配す。ここに夫婦別るることの易く会ふことの難きを相嘆き、各(おのもおのも)慟(かな)しみの情(こころ)を陳(の)べて、贈り答ふる歌」


あしひきの山道越えむとする君を心に持ちて安けくもなし

   あしひきの やまぢこえむと するきみを こころにもちて やすけくもなし     
                                                   (15-3723)



この頃は恋ひつつもあらむ玉くしげ明けてをちよりすべなかるべし

   このごろは こひつつもあらむ たまくしげ あけてをちより すべなかるべし
                                                   (15-3726)


今夜あたりは恋しく思って過ごすのでしょう、でも、朝が明けてあなたが発ってしまって後は。

もうなすすべもなく。ただにただに切ないばかりなのでしょうね。




我が屋戸の松の葉見つつ我待たむ早帰りませ恋ひ死なぬとに

   わがやどの まつのはみつつ あれまたむ はやかえりませ こひしなぬとに
                                                    (15-3747)



白妙の我が下衣失はず持てれ我が背子ただに逢ふまでに

   しろたへの あがしたころも うしなはず もてれわがせこ ただにあふまでに
                                                    (15-3751)


ちょっとここに詳しく正確に書く自信が無いのですが、万葉集のころは、女性たちは、防人の妻なども同じく・・・下衣や。眠るときにつなぎ合う紐や。そういった品を、別れて行く男に贈ったようです。

襤褸のようになっても持ち続けた男、そうでない男。受け取った方の事情はさまざまだったのでしょう。


 

春の日のうら悲しきに後れ居て君に恋ひつつ現しけめやも

   はるのひの うらがなしきに おくれゐて きみにこひつつ うつしけめやも
                                                      (15-3752)


待つしかない時代。生きているのかそうでないのか、悶悶と待つしかなかった時代。


ここには引きませんでしたが、流された先から宅守は、をとめに、うたなど託してよこしたようです。


この記事でいちばんご紹介したかった、いちばん有名で強烈な一首は、以下です。

行かせたくない人を行かせるしかなかった娘子(をとめ)が、全身でたたきつけるように詠みあげた一首。
 

君が行く道の長手を繰りたたね焼き滅ぼさむ天の火もがも

   きみがゆく みちのながてを くりたたね やきほろぼさむ あめのひもがも
                                                      


あなたが行く長い道のり、わたしから離れて行く道のりを、くるくると手繰り寄せるようにして、焼き尽くしてくれる天の火がほしい。そうすれば、あなたは都に留まるしかないだろうから。私のそばにいられるだろうから。


彼女の上に、天の火は・・・




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・ヒミツの〇さん

よく、よく、わかっています。

お気持ちわかっています。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

ありがとうございますと重ねてお礼申し上げます。

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