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都を遠み

采女の袖吹きかえす明日香風都を遠みいたづらに吹く

   うねめの そでふきかえす あすかかぜ みやこをとおみ いたづらにふく

                                    志貴皇子   51


広い一面の野原です。

はるかに見渡せるのは、山、なだらかなやさしい起伏の山ばかり。

采女の袖はゆったりとしている、采女の裾もゆったりしている、向こうの方から一直線に、さああっと。

さああああっと、吹き渡って来る風に。

采女の裳裾がひらひらとなびく、采女の袖が風にひるがえって流れる。

采女のふくよかなうりざね顔がしばし、舞い上がり翻った袖に、隠れます、また、まみえます。

明日香。ひろい広い野の、そのただなかで。



志貴皇子は、天智天皇の七番目の皇子。

うたの情景は、すでに都が移ってからっぽになってしまった明日香の地へ、戻った折りの皇子が、過ぎ去った日の、あいしていた采女の姿を想い、今は何も無いそこへ彼女を立たしめて、詠まれたものとされています。

この一首のなかの采女は、実在でないもの。幻の女性。そして、うたの情景が鮮やかゆえにそうであるゆえに、まことそのような女性が在るごとく、在ったごとくに思わせる、想像させるのではないかと。

さやさやと草原のなびく一面の野原。

太古のむかしからそこにあり続ける稜線のやわらかな山々。

風をはらんでひらはらと揺れる若い采女の衣裳、采女の目は遠い青い空の上の、どこを何を見ているか。


有名な一首で、大好きなうたのひとつです。

志貴皇子については過去に書いたこともありますが、ここにもう少し、書いてみたいです。

少し用が出来たので、後に新たな記事となるかもしれません。





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コメント

いま、ふっと思ったのですが
うたが生まれるときは、うれしい時より断然悲しみに接した時が多いですね。

うれしい時は、ただでへらでへらしているのに、悲しみは言葉を溢れさせる作用があるみたい。

いまなら、すごいうたができそう。

残念ながら今日は志貴皇子さまと触れ合う時間が持てませんでした。


・たまき さん

仰る通りですね。

順風満帆な時より、心が痛くてみしみしときしんでいるような時の方が、大きな意味での「詩」の思いに近づくように思います。

感傷的でどうのと言われ続けていながら人気に陰りの無い石川啄木も、いい例だと思います。

 実務には役に立たざるうたびとと

 われを見る人に金を借りにけり

もう、笑うしかないようなリアリティ。啄木はいつも、本当にお金が無くて。でも、少し入るとパーッと使ってしまったりおんなのひとを買いにいったりした。周囲の人々は呆れて見放したり離れたりしたけど、金田一氏のように、生涯彼のことを懸命に支えた人もいて。

センチメンタルと言いつつ、啄木のうたは、胸に来るんですね。

  不来方のお城の草に寝ころびて

  空に吸われし十五のこころ

こんなのもいいです・・・

その啄木は「うたは私の悲しき玩具です」と言っています。

悲しい切ないひもじい時に、人は、詩人になる。これは真理と思いますし、そうしてぼおおっと言葉を追い求めていると、周囲の目は厳しくて。

おかしなもの書いてるより、ホウレンソウの一把でも工面して来い、などと急きたてられたりするのですよね。

   背後より突き飛ばされて膝痛し

   この痛み無駄にせじなどと思ふ

いま思いついたので、手直しして一首になるかどうか。

たまきさん。

胸きしむ思いを、どうぞ、うたって下さい。それが、もしかして、ミジンコ軍団による「しかいし」になるのかも。(笑)。うたって下さい。うたは、訴え。

素敵な夫婦

KUON様

素敵な詩の解説有難うございます。
たまき様の心が痛んでいるときの方が、詩になりやすい。
そうなんですね。

私も入院したり辛かった時の方が、
何故か、懐かしく、そして記憶が鮮明です。
その時に流した涙は、今の自分を支えてくれています。
くおん様のブログ、毎日みてます。
楽しみにしています。

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・みさき さん


実は夫のことなど書くつもりは無かったのです。ちっとも面白くないやろと思いますし。実際、書いた通りの日常で、聞いていただくようなことではないのですが、これも一応、書いておこうと、アホな家庭内のこと書いたのでした。

肯定的にお読み下さってありがとうございます。これは本当に感謝します。

いろんなことがあって、悲しかったことなど自然に忘れているのは、自己防衛の心理が働いているのかな。それでも、心が痛かった日のことは、気持ちのそこにこびりついていたり。

痛い思いを経験して人の痛みがわかるようになるのだとしたら、マイナスの意味ばかりでもないのですね。

出来れば、優しい気持ちで生きていたいなあ。

損してもいいから(少しだけね(笑))。いちばんで走っていなくていいから。

しみじみと、残って来ている歌を読んでいると、励まされるのですよね、私は。

みんな、何も無くて生きていたのではないよね、とか。偽善者みたいなことを言いますと、人が傷ついているのを見ているのは痛いです。ちょっと今、感傷的?(笑)。


・ヒミツの〇さん。

ご丁寧にお礼していただき、恐縮です。仰ってることも、よくわかりました。

そんなに大切なお方なのですね。私もあの皇子さまは好きです。最後が悲劇的でないのもいいです。

御陵の近くは、今の工場に移転するまでは、よく車で通りかかりました。穏やかな田園地帯です。ゆっくりとお眠りなのだと思いますね。

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やはり赤い口紅が好き。


ものすごく唐突ですが、私、口紅(だけ)はシャネルよ。(笑)。

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