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貴族の若い兄ちゃん

前回の記事の終わりでは、愛妾を若くして失った大伴家持の、悲傷のうたである長歌をご紹介しました。

短歌は五七五七七の調べで詠まれます。基本的に三十一文字。

長歌とは、文字通り長い歌。五音 七音の句を三回以上繰り返し(昨日のうたはそうなっています)、最後に七音の句を添える形式の、これも短歌と同じく、和歌です。

今日いまから記す「反歌」と呼ばれるものは、反対の反でなく、長歌の後に詠み添える短歌をいいます。

かえしうた。以下です。


  時はしもいつもあらむを心痛くい去(ゆ)く我妹(わぎも)か若き子置きて(467)

  出で行かす道知らませば予め妹を留めむ塞(せき)も置かましを(468)

  妹が見し屋戸に花咲く時は経ぬ吾(あ)が泣く涙いまだ干なくに(469)


どんな状況でか、死んで行った我妹=わぎも=家持のカノジョだって、心残りで辛かったんです、「若き子」置きて。

幼い子を残しての死だったのです。

あなたが出て行く・・行ってしまう道を、知っていたなら、あらかじめあなたをとどめ置く=行かせたりしないための=塞を、作っておいたものを。

あなたが眺めた(元気だったころにその花を植えた)屋戸=住まい=に、花が咲いた。時が経過した。私の涙は今も乾かないでいるのに。

・・・家持、かなしく詠んでいます。

もっと詠みました。以下です。

―悲緒(かなしみ)息(や)まずてまたよめる歌五首

  かくのみにありけるものを妹も吾(あれ)も千歳のごとく恃みたりけり(470)

  家離りいます我妹を留みかね山隠つれ心神(こころど)もなし(471)

  世間し常かくのみとかつ知れど痛き心は忍(しぬ)ひかねつも(472)

  佐保山に棚引く霞見るごとに妹を思ひ出泣かぬ日はなし(473)

  昔こそ外(よそ)にも見しか我妹子が奥津城と思(も)へば愛(は)しき佐保山(474)



数だけを言うなら、慣れていればうたはつくれます。家持もそうだったでしょう。

うたを詠む、気持ちを形にするって、ちょっと、デトックスみたいな効果もあると思う。

いきなり私事ですが。娘夫婦が、少し前、ドラゴン アッシュのライブに出かけ、喜んでよれよれになって帰宅しました。

古谷 一行の息子、と言う言い方は失礼かな、ケンジさんはもう長くの大スターさん、その方たちのステージを観に行って、一緒にうたうわ席のまま踊るわ、久しぶりの大興奮、明日仕事できるやろかと言いつつニタついている二人でした。二人ともがファン。

二十年くらいむかしに、初めてラップという音楽を聞いた時。

これ、和歌の長歌だよね、どんどん積み重ねて行く言葉、リズム、韻を踏みながら。

・・・と感じたのでした。

家持は沢山うたをつくれる人だった。

幼い子を置いて逝かねばならなかった自分の女を、愛しんで悲しんで詠んだ。

その子のその後は、全く知られていません。子を持った気分にはなれなかったのか。

愛妾だった女の奥津城・・墓は、佐保山につくったようです。

自宅に近い、いつでも詣りに行けるあたりだったでしょうか。


でも、家持は、けっこうほどなく、死んだ女の前に通っていた「坂上大嬢」との関わりを取り戻そうとうごき始めたのであり。

大嬢は、家持のカノジョのことを知らなかった訳もなく。

すぐにはハイハイと寄り添えなかったと思います。と、今夜は、このあたりまで。


貴族の若い兄ちゃん。何をするにも心脅えは無かったのかも。

うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒く偲ひつるかも(465)

そうはいっても、この一首はすばらしいと思います。世の無常を底の方で知っている、感じている。そんなあたりが。




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  1. 2017.07.23 (日) 07:23
  2. URL
  3. アルジェリマン
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伸びやかな佐保路

KUON様、

和歌を詠む政治家のおじさん、
そんな思い込みしててごめんなさい、家持さん。

いいとこの兄ちゃんで、仕事も遊びも、
今風表現ではリア充、だったのですね。


心のうちを素直にありったけ歌に詠んで、
そんな自分に照れずに生きてたのかな、兄ちゃん・・・。

奈良の佐保路をずーーっと、
十二神将で有名な寺まで歩きとおしたことがあります。

あの伸びやかな佐保路あたり、恋の道だったのかな、
と、今頃わくわくしています。

  1. 2017.07.23 (日) 12:36
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  1. 2017.07.24 (月) 11:59
  2. URL
  3. たまき
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あゝ無常…


  1. 2017.07.24 (月) 23:40
  2. URL
  3. KUON
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・アルジェリマンさん


未だに私は政治家の家持のことが、実態も時系列もきちんと判っていなくて、ヒヤヒヤしながらそこのとこ書いています。

先日は「少納言だったり」とか書きましたが、中納言だったのですよね。

あまり政治家としてはうまいことなかった・・・?


ふつうの、さらっとした何でもなさそうなうたが、でも、いいのです。


・ヒミツの〇さん

私にも言いたいことはいっぱいありますが、今は黙っているのみ。それしか無いと考えています。

一私人が受けることとしては理不尽で重すぎます。これも、書かない方がいいのかな?(笑)。元気でいましょ、とにかく。


・たまき さん

ああ無情。レミゼラブル。そうですね。

ああ無常。そうですね。

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プロフィール

KUONの久遠

Author:KUONの久遠
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四十年以上住み慣れた奈良の地を離れ、海の近くへ越してまいりました。

海の見ゆる高層の部屋に耳遠き
夫(つま)とふたりの暮らし始むる

明確に、残生を意識します。余分なあれこれはもう要りません。
シャネルの赤いルージュは変わらず。生意気なままの私でいたい、いようと願っております。

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