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相思はぬ人を思ふは


相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後に額づくがごと

   あいおもはぬ ひとをおもふは おほでらの がきのしりへに ぬかづくがごと

                                608  笠郎女 (かさのいらつめ)

思ってもくれないひとを思うなんて、大寺の餓鬼像を後ろから拝むようなものだわ。

こういううたです。うたの前には「こんなにも私があなたを思っているのに」という思いがあり、ああそれなのに、思いを返してくれないあなたを思い続けるなんてアホらし、もう腹立った、それってつまり、どうでもいいような意味フメーなあんな、餓鬼の像を、しかも後ろから、きったないおシリの方から拝むみたいなものよ、きーっ。

こういう感じでしょうか。ブチ切れています、郎女(いらつめ)さん。


・・・今日は、但馬皇女、穂積皇子の後ですので、歳の離れた異母弟にツマの一人をさらわれてしまった(初めからそんなつもりもあったがあれこれあって単に取られちゃった感じになった)、但馬皇女の夫、穂積皇子の長兄であった「高市皇子」について書くのかなワタシ、という雰囲気だったのですが。

急遽変更。

万葉集の中でもファンが多く、共感する女性も多いこの一首、1300年も前の恨み節を取り上げることになりました。

郎女を怒らせた・・・あまりにも悲しみの大きかった恋が激怒に至ってしまった、この相手の男性は、大伴家持。

万葉集の編纂者、大歌人でもある、家持です。

家持には十数人のおんながいた。うたがのこっていたりうたに詠まれたりしただけでこの数(多分)。表に現れていない女性たちは、別の話になります。よね。

この郎女は、その中の一人です。一人で、一気に24首ものうたを取り上げてもらっている女流歌人でもあります。そんな例は実は、他にありません。

集全体では29首も取り上げられている、有数の万葉歌人なのです、彼女は。

ひとりのひとを、恋しい恋しいとひたすらに思い詰め、すぐれたうたに詠みあげていった若い女性。


なんで今回、いきなりこの「餓鬼のしりへに」について書いているのか。

成り行きです、言ってみれば。

私の住まいにほど近く、タクシーなら1000円でお釣りの来るあたりに、京都や橿原神宮方面へ出かける時に利用する小さな駅があります。

その小さな駅に、昨日か一昨日だったか、京都から帰って来た私は出迎えを頼んでおり、早めについた迎えの者は、駐車場に車を停めて、店の中に入って小物を買っていた(やたらリアルですが)。私は、待つ間そうだと思いついて、まさしく「そこ」にある、万葉歌人の歌碑を、久しぶりに眺めたのでした。

フツーにそこに存在していて、近所の人や通勤通学に駅を諒する人々は、見向きもしない。観光客のうちでも、興味のある少数の人以外は気づきもしない、笠郎女の歌碑。自然石にうたが彫られています。

相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後に額づくがごと

   あいおもはぬ ひとをおもふは おほでらの がきのしりへに ぬかづくがごと


以前に書いたように、当時は今のように漢字ひらがなを混ぜての表記でなく。独特の万葉文字でうたは書かれ、それが読み解かれて、現在読めるうたになっている。簡単に言うとそうです。ですから、この一首も、

「。。。の後にぬかづくがごと」

になっていたり

「・・・のしりへに ぬかづくごとし」

になっていたり、します。

奈良には歌碑が多い。ものすごく多いです。

この郎女の父である? とされる「笠金村」の歌碑も奈良公園に近い方にありますし。

今日は激しい怒りのうたに触れました。

彼女は、苦しい辛い恋のさいごに、叩きつけるようにこの一首を詠み、この地を離れた。恋しい男の傍から遠ざかった、と言われています。

明日は、この郎女の、せつない、心のふるえるようなうたについて。まったく違ううたの作者でもあった彼女について、書きたいと、いま、考えました。

眠くなりました。

されば今宵は。いざ、さらば。

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コメント

不求得苦ですな。
この苦しみは、かなりこたえます。
この苦しみに右往左往して終わるような気がする我が人生かな。字余り。

愛想吐かして啖呵きって

KUON様、おもしろくなりそうなシリーズ(?)です。

若き日は自分を殺し押さえつけ アキラメ求め本に埋もれた

・・・てなこと思い出したのでした。

こんにちは

色々人の恋の行方 想像するの面白いですね
人ごとやから(笑)

思いや考えって自分の中で大きく募ってしまって
なんでこんなに思ってるのにぃ〜!!
悲しみや寂しさが 怒りに変わってくる

それは自分の思いの中で増し増しになって
恋慕と恨みが いったりきたり・・・
家持くんは は?どうかした? ってくらいなのかも

郎女さんは
この句を書くことで すっとしたのかなぁ
今ワイドショー賑わせてる奥さんみたいに
もっと イ〜ッ!! となって書き続けたのかなぁ

自分は ええ格好しぃなんで(笑)
未練たらたら、文句ブツブツ言いながらも
表ではあきらめのいい女 演じそうです(笑)



昔も今も変わらないですね

KUONさま こんにちは。

大伴家持ってモテたんですね!
歌の才能がある上に女性が好きで、恋愛の方の才能も・・・
そういう人は、一人を思い続けるなんてないんでしょうし。

家持の方は「ちょっと付き合ってみたんだけど、違ったんだよね~でもはっきり言うと可哀想だから、LINE既読無視してるんだよね、察してくれよ」
みたいな感じなんでしょうか、現代だったら。

郎女ちゃん、次行こ。って慰めたくなるお歌。
共感しない女性はいないかもしれません。

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・たまき さん


求不得苦。これを「ぐふとくく」と、いっぺんでは読めんかったくおん。調べました(笑)。

ぐふぐふ、とっきょきょきゃきょく。・・・ふざけちゃおりません、ごめんなさい。

そうです。

「仏語。八苦の一。求めているものが得られないことから生じる苦しみ。」

わたしの一生(も)つまりは、これでした。

宝石毛皮そういったものには興味ない。似合わないし欲しくないし。お金も無かったからカンケー無かったし。

人のこころ。それがいつでもターゲットでした、親の愛からつらつらと、若き日にはむにゃむにゃと。欲せられても嬉しくなく、自分が欲しいものしか欲しくなく、そのジレンマ、エゴイズム。

書いてたらお経みたいに止まらないですが。

>この苦しみに右往左往して終わるような気がする我が人生かな。字余り。

なかなか味のある字余りさん。

もう当分はうたに溺れる覚悟、

>求不得苦この苦しみに右往左往して終わらむかわれの人生

形を整えてしまうと、つまらなくなるような気も・・・勝手なことしてすみません。

私も同じ気がします。

>つるつるの善き人となりて何をせむ煩悩はわが内に留まれ

むかし詠んだうたですが。

もう、うたに溺れます。


・ アルジェリマンさん

>若き日は自分を殺し押さえつけ アキラメ求め本に埋もれた

う~む。これもよくわかる・・・私はも少しあがきました、みっともなくあがきました、アタマの中に巨大な石を抱えて(ヒユですが)雪の上をまっすぐに、もうもうただまっすぐに歩いて、転んで、若い時は生きることが大変でした、体力はあったけど、感じやす過ぎて(どうでもいいこと限定で)痛くて痛くてたまんなかった・・自己愛のヒトでしたし(笑)。

家持のうたってね。

いいんですよ、若い日からおっさんになるまでの。それぞれに。当時の家持の生きていた世界では、イケてるうたを詠める、ってのが、最高のことであって。

たのしんでぼつぼつ、行くと思います。


・ ワッ・タ・シ熟女N〜さん

追いかけたら逃げるんですよね。必ずそう。わかっている。わかっているが、仕方ないのですよね。

家持くんは、つれない男でした。つれない男にドボンしてしまうと、情の濃い女には地獄なのですが。

地獄にいて何かを見てしまう人間もいて。

ううむ。ですな。


・laviniaさん

人間って基本、変わってないな~と思わせるのが、万葉集と思います。

天皇もおひめさんも、とても人間くさい。

沢山のうたがあり、読んでいると、実感します。

家持氏も、笠郎女にはけっこう「それないでしょ~」的な男性像でしたが、彼だって苦しい切ない思いを詠んでいる(ほかの人に、ですが)。

恋という文字ばかり書いておりますが、当時は、労働する必要の無いヒトビトは、することといって、選択肢というか、あまり無かった。

そういうこともありましてね。

ただ、特徴として、どんなうたの詠み手も、特に女性は、「うたの後」の不明なことが多い、そればっかりなくらい。

この笠郎女も、わーっと詠んだ一時期の後のことはわからない。

>郎女ちゃん、次行こ。って慰めたくなるお歌。

ホントに、そんな風に、お茶でもしながら聞き役に徹してあげたいような気がしますね。


・ヒミツの〇さん。

長いコメントありがとう存じます。

よおくわかりました。

はい、です(笑)。

おはようございます。


・ヒミツの〇さん

初めてのコメントありがとうございました。

ただ・・仰っていることには、私うなずけないです。

イヤミを云う相手って、私にとってどなたなのか。

はっきり言えますのは、たとえば何か言わずにいられないことがあるなら、私は、きちんと伝わるように正面から言う。もしきは、そこまでの情熱をもうもてないなら、すすーっと黙って離れます、それだけのことです。

わかって下さると嬉しいですが。皇室関連の記事をやめようと思ったのは、崇敬の対象でなくなった皇族に、これ以上言うことも無い、となったからで。


うたは私にとって、大事なもの。そのうたを、たとえば自分の負の感情のために、利用してイヤミ言う道具にはしたくないです。

でも、どんな風に受け取ってどう思われるかは、読む方の自由と思います。うたを読むと言うことは、自分を知らせてくれることでもある、と感じています。




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