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プーちゃんとおばあちゃんのこと

今日は墓参りをしました。

いつもより大きい花の種類も多い彼岸用の花を買い、墓地へいったら大混雑していました。

長い時間かかって何とか車を降りようとしているお年寄り。墓守りさんと話をしている中年女性の大きな声、墓苑内を走り回る子どもたち。

あるお家では犬も一緒に来ていて、見ていると、お墓の前にちょこんと座って、来ている方々にアタマを撫でてもらっているのでした。ハスキー犬。おそらく年寄りになっている犬。

あのコは、飼い主さんに先立たれてしまったのだなあと、なんとなくじいっと見てしまっていました。


今日は、ご近所の「Hさんのおばあちゃん」のお葬式の日でもあったのです。

連休中に少しでも不用品を片付けておきたいと、庭で軍手はめてゴミ袋と格闘していた昨日。

自治会の班長さんが来られて、緊急の回覧お願いします、訃報です、と。

三軒向こうの、プーちゃんのおばあちゃんが昨日亡くなったとのことでした。

えっ。一瞬絶句したわたし。

トイプードルのプーちゃん・・・プリン嬢・・・と、おばあちゃんのコンビは、この界隈で知らない人は無く。

朝も夕方もお昼間も、おばあちゃんはプーちゃんのリードを引いて。

ほとんどの場合はプーちゃんを抱っこして。歩き回っておられたのでした。

娘さんの夫さんは単身赴任でめったに帰って来られず。娘さんは昼間お仕事。男のお孫さんはアメリカにおられる、女の孫さんは東京住まいで、小さなお子さんがいる。Hさんのおばあちゃんは、昼間は一人で、小さくてほっそりとした、大きな目がいつも涙でうるんでいるような超高齢犬のプーちゃんと、二人で過ごしておられたのでした。

私にもよく、声をかけて下さった。小柄な上品なお年寄りで、

「わたし、二十九の年に主人を亡くしましてん」

が、いつも話のきっかけでした。お茶を飲みにいらっしゃい、とか。時には美味しいお饅頭を戴いたからご一緒にどう? とか、誘って下さったのでしたが、私は、よそ様のお宅にあがる習慣無く暮らしていて。もう何十年も。

きっと話も長くなるだろう、一度上がらせてもらったら二度目はお断りしにくいだろう、など、自分の都合でいつも、うやむやな感じで離れて来ていたのでした。立ち話の折には、けっこうゆっくり話を聞かせてもらった。

同じ犬種を飼っていて、散歩仲間である私の娘ムコに、いつも優しい言葉をかけて下さっているのは知っていました。

Kはオトコマエやから気に入られてんねん。娘は笑いながら言っていて、それもいいよね、と私も、にんまりしていたのでした。

オトコマエなばかりでなく、娘ムコは柔らかい性格で、愛想の無い私や、年中忙しくてバタバタしていて、どたどたと階段を下りて来て靴をつっかける勢いで玄関を走り出て車に飛び乗ってバビューンと出て行くせわしない娘と異なり、ゆっくりと犬に付き合いながら、仕事から帰ってからも二度、三度と散歩に連れて出てやる。

おばあちゃんと会う機会も多い訳で、年齢差四十歳少し身長差もそれくらい、で、立ち話に花も咲かせていたようです。

で、ご近所のいろんな小さな話題に一番詳しいのも娘ムコ。いい意味の田舎育ちのおっとりが、役だっているようでした。

プーちゃんのおばあちゃんは、わが家の孫どもにも、よく、優しい言葉を下さっていました。孫どもも、おばあちゃんのことを、好いていました。


急な訃報に驚いて目を走らせた回覧板には、八十二歳で、と記され、お名前はHさんのおばあちゃん、でなく、Oさんであることが、記されていたのでした。

「ひと月ほど前から入院しておられたそうでしてな」

・・・知らなかった。

この二月三月、私は、三つ違いの孫どもの入試や卒業や。仕事の大きなひとつの、突然雲行きのあやしくなった先行きや。それに伴ってガクンと落ちるかも知れない会社の売り上げのことや。何やらしきりにやらかしてくれる姑のこともあり、

そんなこんなで頭がいっぱいで、おばあちゃんとプーちゃんのことは、きれいさっぱり自分の中から消えていました。

以前は、数日見かけないと、あら、何かあったのかしらと感じたりしていましたのに。

・・・入院はどなたにも伏せてあったようで。

・・・葬儀も「家族葬」で。

香典供物いっさいご無用に、ということで、と、まぶたをシバシバと、自治会班長さんは帰って行かれたのでした。

娘も娘ムコも、孫の二人も、聞いて呆然、ショック、この家へ越して来た五年前から、可愛いね、ええ子やわね、と言っていただいて来た女孫は、黙ってしくしく泣き出して。

家の前には喪を告げる張り紙の一枚も無く、外を通りかかっても静まり返っていて。

わが家の犬を連れ出して、さりげない風に様子を見に行った娘ムコも、

「なんにもわからへんわ」

と帰って来る。家族の皆さまで、静かに、おばあちゃんを送られるのだろう、気持ちの中でお送りをさせてもらおう。私は、それだけ、口に出しました。

三十にもならない歳で夫君と死別されたおばあちゃんには、いろいろさまざまなことが、おありだっただろう。

・・・今年のお正月、めったに外に出ない私が、坂道の下の公園に向かって歩いていた時。

あらあ。明るい声で、呼び止められました。

プーちゃんを抱いていないおばあちゃんが、もう、大ニコニコの笑顔で、ひ孫がきてますねん、と、大きな声で話しかけて来られて。

一緒にいた、とても綺麗な女性がお孫さん、ベビーカーに乗せられて眠っているのが、おばあちゃんの「ヒマゴ」さん。

「これ孫な、東京にいてますねん、昔テレビに出てましたのやで。タレントやのうて、ニュースの」

わあっと話すおばあちゃんを、優しくとどめて挨拶して下さったお孫さんは、本当に美しい方でした。

きれいで。お品のいいお孫さんですね。思わず口走ってしまいました、本当の気持ちでした。

会釈しながら遠ざかって行く、おばあちゃんと孫、ひ孫さんを、なにか温かい気持ちで見送った、思い出せば、寒い季節でもあったし、あれが、おばあちゃんと言葉を交わした最後だったと。

思えば、何とも言えないです。

おばあちゃんの死、自体は、長病みされないでよかったなあ、というのが、本心です。

ご苦労はおありだっただろうけれど。静かな住宅地に住まわれた晩年、愛しい犬と二十年ほども一緒で、連れて、抱いて散歩をさせ、プーちゃんの洋服だって、いつ見ても、可愛いものばかりでした。

おばあちゃんとプーちゃんは、誰の目にも最高の相棒に見えました、プーちゃんはおばああちゃんにしかなついていなかった。誰にでもいつもワンワン吼えるのでした。おばあちゃんだけが好きだったのだと思います。

おばあちゃんとぷーちゃん、どっちが先やろう。そんな不謹慎な(でも実感)思いも、よく、心の底に湧いていました。


・・・おばあちゃんの死が、現実のものとなって。

今日、春のお彼岸の日、おばあちゃんはお骨になって、帰宅されたのでしょう。

もうあの笑顔は見られない。

お墓にいる時も、この時期に旅立たれたおばあちゃんのことが、しきりに思われました。

そして。

プーちゃんはどうしているのだろう。

どうなっているのだろう。

一か月のおばあちゃんの入院の間、プーちゃんはどうしていたのだろう。

いま現在のぷーちゃんのことが、わからないのです。

時々は聞こえることもあったぷーちゃんの鳴き声、それも、ずっと、聞いていない・・。

娘の家族も、おばあちゃんに思いを馳せていなかったこの冬から春のことを、何やら痛みを伴って感じている様子です。

でも仕方がないよね。ココロの中で私は自分に言い聞かせます。わかるけど、仕方ないんだよ、仕方が無いことなの、でも、

悲しい、

淋しい

プーちゃんが気になります。

プーちゃん、きっと、おばあちゃんと、そんなには離れていないよね。

そうあって欲しい、おばあちゃんとプーちゃん、いつも、ずっと、一緒だったのだから。

離れたら二人とも、どちらも、淋しくていられないよね。

そんなことを、ふらふらと、考えてしまっています。




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コメント

おはようございます

おいらもひとさまの家には
親しいひとでも滅多にあがりません
お話がしたいときにはお鮨やさんがありますから
きちんとした格好で出かけるとしますでしょ
近所の人に会いますと
『どちらへ?』と言われますが
おいらは『ちょっと・・』とだけしか答えません
ある意味京都のお人のように心がけております

荒れる学校、乱れる少年少女の性
なんともだらしが無い
これ等は躾の出来ない親が齎しました
簡単なのにな~でございます。

引き続き勉強させて頂いております
感謝であります。

・はしびろこう・ウナさん

>ある意味京都のお人のように心がけております

爆笑しました。

道化の顔して励ましに来て下さったのだなあ、と、今回は素直に感じました。私はきっついヒトですのにね。ありがとうございます。

ベルモンドは、イメージですが、女性が惚れて尽くすに足る、かつ、お洒落な男性と思いますね。ドロン氏は、男としては酷薄だと思う。でもでも、私は、ドロンのあの、なんというか、ドロンの方が、いいんですなあ。

奥方は何につけ、趣味の佳い方のようですね。春のお野菜が美味しいですね、いま。

人間て
何をしてくるたからではなく

妙に気にかかる人っていますよね。

あの人がもうこの世にいないんだ、と思う時に
平気な人と
さみしい人のいる不思議

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・たまき さん

あのおばあちゃまを、面倒がる方もいらしたし、徘徊として通報する方もおられた。でも、ほとんどの方が、おばあちゃんの、いつも同じ話しかけに、優しく応じておられたのです。立ち話の相手になって、微笑んでおられました。

お年寄りの多い町。そうだからかも知れません。比較的暮らしも落ち着いておられる方々が多いのも・・・

もう、見かけること無い、人とワンコの静かな日常。先にプーちゃんが逝って、おばあちゃんが後を追って行かれたみたい。

よかったなあ、と、思っています。


・ヒミツの〇さん

ご心配おかけしましたか、ごめんなさい。

会社には、いろんな時期があります。私は大丈夫と、いつでも思い込むようにしています。無理無茶はしない、自分の「とく」だけ考えない。後は、一心に仕事して、その後は天に任せます(笑)。

かつての夫の会社の倒産時は子らもまだ若く、親を必要としていましたが、今はもう大人。

最悪の事態になっても・・・と、考えは持っています。自分の利益だけを考えていないなら、大丈夫。あと数年は頑張っちゃうつもりです。70歳で引退する(笑)。

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としどしに わがかなしみは ふかくして 

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・・・・・・・・・・・・・・・


やはり赤い口紅が好き。


ものすごく唐突ですが、私、口紅(だけ)はシャネルよ。(笑)。

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