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相聞 お市さま



また、うたの世界に入っていました。


柴田勝家は、織田信長に見いだされ、忠義の人だった、と云われますが。

本能寺の変の後。秀吉との対立が深まり、賤ヶ岳のたたかいで敗れて、越前北の庄にたてこもった。

覚悟を決めて、妻に、城から逃れるように説得しました。

勝家の妻は、信長の妹、市。

戦国一の美女と呼ばれた女性です。

お市の方は、けれど、逃げないと言う。

お市の方にとって柴田勝家は、最後の夫。

戦国の女の常として、それまでの彼女は、夫を殺され、娘たちのために城を後にし、言われるままに再婚し。

一人息子は串刺しにされて殺されました。さんざんな目に遭っていました。

勝家は、市に優しい夫で、大切にしてくれました。娘たちは成長して、もう、母親である自分を、どうしても必要とするということでもない。

かつてのように、城を後に落ちたとして、命は助かるとしても、そこにいるのは、あの、さるというより兄はハゲネズミと呼んだ、秀吉。

秀吉が、何をどうしても自分を欲しがっていることは、とうに判り切っていたこと。

今度こそあの男は、自分に向かって来るに違いない。

初めの夫をあやめ、息子を処刑し、兄の跡をそっくり抱え込んで、今では、権勢の限りを・・・

あの、ハゲネズミ。指いっぽん、触れるどころか、半径10メートルにも近寄らせてやらんわ。

交換条件いっぱいつけて、来るんだろう、あのげせんは。


いやなこった。

こうなってしまえばバカバカしい。

そんなとろくしゃあこと、なんで私がしないかんの。

たあけらしいわ、のれんわ、そんなこと、あいつの顔なんかもう、見るのもケガラワシイでかんわ。

正直わたしも疲れてまった、いろんなこと、いっぴゃあ、あったんだも。

娘んたらあは、なんとか、やってくだろ。

私だってもう、自分のためにものごと決めたって、ええはずだないかね。

やりてゃあように、やらしてもらってええわね、まあ、そゆことだと思うんだわ、許してもりゃあてゃあ、おとっさんもおっかさんも、兄さまだって、そう、思やあすはずだも。

まあいっぺん、出てって、なんか、やり直す、むりむり、疲れてまった、無理です、それと、まっと他になんでかしゃん、言うなら、よう。

この夫と一緒に、行くんだったら、落ち着いて逝ける気が、する・・私が、苦しまんでもええように、うみゃあこと、してくだしゃあす気が、する、それが、いちばんええことみてゃあに、思えるもんで、こうせなもう、しょうがにゃあんだわ、な。

・・・なんでここへ来て、名古屋弁しゃべっとるか、わからんだども。

この人は、ええダンナさんでいてくれやあた。

一緒に行かいてくだしゃあ、て、さっき、言ってまった、そんだら、そおか、と、にこおっと笑って、言ってくれやあたで。

やっさしい目で、言ってくれやあた、もう私、気がすんだだわ。

気持ちが、すううっと楽んなって。

もう、生きとりてゃあ欲もにゃあ。

男の人んたらあは、国が欲しい名が欲しい、欲しい欲しいでジタバタ、生きとりゃあす。

女が欲しいモンは、そんなもんと違うんだわ。

まあ、いちぎゃあに女、言っても、いろんな人がいらすけど・・

私は、このヒトのとこへ来て、ほっこら、包まれたみてゃあで、初めて、ゆっとりと、ダンナさまのそばにおった気がする、そんでよかったんだ、私も、わきゃあことは無かったんだも、ゆっくり、そゆのが、続かんかったけど、それはまあ、ええね。

ここで、この人と、死んでくんだ。

それが、わたしの、最後の道だ、思うんだ、

一本の、まっすぐな、きれえな道だと、思うんですわ・・・



とか、お市の方が、考えられたかどうか。

あくまで即興、ジャズみたいなもんです(かっこ良すぎるか・恥)


今日こそ城は落ちる。落城。というその日。

気持ちを定めて、しずかなこころで夫婦は、天守閣から外の様子を、眺めたか。

ほととぎすの季節だったのですね。

ホトトギスは、終焉の直前の静寂の中で。鳴いたか。


   さらぬだにうちぬるほども夏の夜の

   わかれをさそふほととぎすかな

                    お市の方 辞世


勝家の思いは、どうだったでしょう。

主家筋の美しい女を、思いがけなく妻として。

その妻は、意外にも、自分に寄り添って、やわらかい妻でいてくれた。

しあわせ、というものだったのだろう、この女と過ごした月日は。

そして今。最後の時を、共に迎えるという。

わが名をそそぐのは、後の世の、こころある誰か。そんな者が、いるとすれば。

市は、のがれぬと言う。

そう聞けば、この女の命が惜しい。

もっと生かしておいてやりたい。

そんな気持ちはある。あるけれど、

・・・もう何も望むことは無い。

これでいい。充分である。

(とか、勝家氏が思ったかどうかはわかりません、そうじゃないかな、そうだったらよかったなあ、の、くおんちっくな妄想で。

妄想です。)


   夏の夜の夢路はかなき跡の名を

   雲居にあげよ山ほととぎす


                    柴田勝家 辞世




いっときの後。

柴田勝家は城に火を放ちました。

お市さまの胸をつきました。

自身は腹を召した・・・十文字に腹を切っての自害だった。

と、いわれています。
 




 
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コメント

ご無沙汰しております。

ほととぎす
と聞くと、私の先生が(古文書を読んでいます)地獄のが空くと、ほととぎすが飛び出して一声啼く。と繰り返しおっしゃいます。
時代もだいたいこの時代です。

御夫婦揃ってほととぎすを唱える。
覚悟をしたので放っておいてね。と、聴こえます。

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No title

お返事おそくなりました


・カエルさん。少しだけご無沙汰でしたかしら。(笑)。

なんとな~く、聞いていた、おっしゃること。

京都に、井戸の底が地獄に続いているというお寺さんがあって。その道を行き来していたのが、歌人の小野某で・・・とか、イメージのつながるのは楽しいです。

古文書を読んでおられるのですか。楽しそうだな・・・。

人生の半ばをとうに過ぎてからの夫婦。

揃って死ぬことは、揃って生きることでもあると、なんとなく常々、おもっています。

>覚悟をしたので放っておいてね。と、聴こえます。

私もそう思う・・このカエルさんのフレーズが、とても胸に来ました。

いろんな思いを、また、めぐらせました。

ありがとうございました。



・ヒミツのEGさん。

私の父方は三河、母は岐阜の人間でした。

親類一同、みごとな、今いわゆる「名古屋言葉」の使い手。微妙な違いはもちろんあるのです、でも、基本、それでして。

子ども時代のおぼろな記憶の中に

「そうきゃあも」

「やっとかめだなも」

「そいで、えも」

もっと思い出しますがキリが無い、ゆったりとした言い回しで、キセルをポン、とやっていたおばあさん、着物の襟をきっつきつに合わせて着ていたおばあさん。

若い頃は「かっこよくない」と封印した(笑)くにの言葉が、もう離れて50年にもなるのに、つらつらと流れ出して来るのです。


記憶の中のおじいさんやおばあさんの話言葉は、優雅と感じられるものです、もう少し、思い出の中にあそぶ気がします。





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やはり赤い口紅が好き。


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