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明治の雪また二・二六の雪




  うすずみのゆめの中なるさくら花あるひはうつつよりも匂ふを

斎藤 史のうた。史、と呼びつけにするには畏れ多い歌人なのですが、様、でもさん、でもないでしょうし、斎藤史、と書きます。

始めてこの桜のうたを知った時、こんなうたを詠みたい、と口走った私に、〇ちゃんなら詠める、詠んでや。と、温かい笑顔を下さったのが、うたの師でした。大きく励まして下さったのです。妙なけんそんしないでお言葉頂こう、いっしょけんめい詠もう、とおもったのでした。

私は、さまざまの(と言ってもいいと思います)賞をいただいたりして来ましたが、身近な人に褒めてもらったことは殆どありませんでした。私の書くものを大切にしてくれたのは他人ばかりでした。

私が何か書いたり評価を受けたりすることは、子ども時代の親にとっては絶対的に喜べないことだったし、はっきりと道をふさいでくれましたし(私は反抗したけど、、養家も一時捨てたけど、白旗掲げて戻ったのでした)結婚後の親にとってもそうでした。

短歌の大きな賞を受けても、うたを勧めた当人が、隠そうとした。無視を通そうともしました。周囲の、他の頑張っている人たちが傷つく、という理由で。

私が、どれだけでもうたを作れるということが、真面目に学んでいる他の方を傷つける。うただけが生きがいの人かていてはるのや。ウチのヨメさんのあんたが賞などもらっても、表だって喜んでやる訳にはゆかない。そういう理屈でありました。師が庇って下さいましたが、

他の諸事でもそういうやり方には慣れていたから、ハイハイわかりましたよ、と。お腹の中ではそう、表向きには、はいわかりました、と。(同じか(笑))。平気で、どれだけでも、何かを作れるはずは無かろう。と、これは胸中のみで。

結果的に、中途半端に、中心にいる人間の家族だからそこそこに、目立たないように、慎ましい形で「うたに向かって行くこと」なんかできません。ザックリやめろと言われる方がマシ。とばかりに、止めてしまった。ワガママだとか思いあがっているとかアンタのためやないか、とか。その他あれこれ、山盛りの言葉をもって引き止められましたが、本気で決めたら戻れません。戻りませんでした。

私は、うたが、本当に、好きでした。始めたらムキになりますがいいでしょうか、と、断って、始めたのでもあったし。

可愛がって下さり、本気で指導してくださった師とも、結果的にお会いできなくなりましたが、短いハガキを一葉下さり、今もそれは、大事なもの入れの中に、しまってあります。古い万年筆とか口紅の空箱とか片方だけのカフスとか、の中に。



斎藤史のうた。アトランダムに。

  白うさぎ雪の山より出(い)でて来て殺されたれば眼を開き居り

  遠い春湖(うみ)に沈みしみづからに祭りの笛を吹いて逢ひにゆく 

  おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり生は 

  野の中にすがたゆたけき一樹あり風も月日も枝に抱きて

  情緒過剰の人といささかずれてゐて我はうなぎを食はむと思ふ

  壁かげにマッチをすれば浮きいでてわが前も壁 まうしろも壁 

  春にまぎれて眠るといへど獣園の檻に生まれて豹に故郷なし

  手を振ってあの人もこの人もゆくものか我に追ひつけぬ黄なる軍列

  思ひ草繁きが中の忘れ草いづれむかしと呼ばれゆくべし

  今日よりは妻と呼ばれてわれの娘(こ)が群衆の中に没しゆきたり

  背負ひ切れぬ夕日の重さ膝折れらばすなはち野辺のひとくれの土

  埋葬の白欲りすれば夜の雪、町荒涼となるまでを降れ

  まこと今なにか亡びてゆくなればひたすらに沁む花のくれなゐ

  盲ひたる母の眼裏に沁みてゐし明治の雪また二・二六の雪

  死の側より照明(てら)せばことにかがやきてひたくれなゐの生ならずやも



1909年生まれ、2002年没。27歳だった1936年、二・二六事件起こる。

歌人であり陸軍少将だった父・斎藤瀏は事件に連座して禁固五年の刑を受ける。

幼なじみだったり父を通しての知人だった青年将校たちの多くが刑死した。

  白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすを磨いて待たう  


愛を受けて育ち若山牧水を知って17歳でうたを始め、↑ のようなモダンなうたをうたっていた斎藤史。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     二月二十六日、事あり。友等、父、その事に関わる。

   濁流だだくりゆうだと叫び流れゆく末は泥土か夜明けか知らぬ

     五月二十日、章子生る。同二十九日、

     父反乱幇助の故を以て衛戌刑務所に拘置せらる。

  小さくていのち頼りなき子を抱きかへりし家にすでに父はなし

  暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた


     九月十七日。仮出獄を許されて、父かへる。

  吹きさらされて居るといふともこの野にはすかんぽの花地しばりの花

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 昭和20年3月、長野県に疎開。

父・斎藤瀏、昭和28年(1953年)死去。74歳。

  稚(をさな)のごとわれのかひなに倚 らしめてはげしき生も終わらむとしつ   史  

  明治大正昭和三代を夢とせば楽しき夢かわが見たりけり              瀏


 
 二・二六事件への思いは、生涯のテーマであり、くりかえし詠まれています。

わたしKUONは、本当にいろんなことに疎くて、わからないことが多過ぎるほどあります。近所付き合いのタダシイ方法から歴史の本の読み方まで。

斎藤史(呼び捨ては難しいです)のうたは、この先もずっと読んで行くと思います。

好きな歌人のうた、として、この件についての斎藤史のうた=うったえ=を、以下に置かせていただきます。

 捨て皇子(みこ)をあはれと謡ふ遠むかし 捨て皇軍をいかにうたはむ
 位階勲功剥奪あとの父の世といづれも老はさびしかりけむ
 奉勅命令とは何なりし伝はらず 途中に消えて責任者無し
 知らぬうちに叛乱の名を負はされしわが皇軍の蹶起部隊は
 幻の命令の行方聞く手段(てだて)さへあらず 弁護人持たぬ軍法会議
 死刑を含む千四百八十三名思はざる罪名をもて処刑されたり
 殺傷は許すべきことならねども<叛乱>と言ひ出ししは誰
 敗戦にまぎらして<叛乱>の語を消去せし国家(くに)のなしたるごま化しも見き


二・二六とは何かと、語り得るほどの知識も見識も持っていません。

ただ、そのような大きな「事件」の当事者の一員の家族として生きた一人の女性の、うたが、私は好きで。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・この部分には、はじめ書いた時、1997年の皇居歌会始儀に、召人としてあがった斎藤史に、今上天皇が

「お父上は、瀏さんですね」

と声をかけられたのを、「昭和天皇が」と、間違えて書いてしまっていたのでした。

教えて下さる方がいらして、訂正することができました。

本当に、ありがとうございます。ここからですがお礼を申し上げます。気をつけますが、こういう時はまたよろしくお願い申し上げます!。

よほど斎藤史が好きなKUON、2013年の2月の15日にも書いています。いま判りました。(笑)。

陛下が斎藤史に、と教えて下さったのは、今は亡きわが師です。うたに厳しく人に優しく、一直線に生きられた、皇室に対しては沈黙を保っておられた方でいらっしゃいました。


      うすずみのゆめの中なるさくら花あるひはうつつよりも匂ふを

いいうただなあ・・・。
  
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桜のかほり

KUONさま こんばんは。

> うすずみのゆめの中なるさくら花あるひはうつつよりも匂ふを

素敵な歌です。桜のはかない美しさがリアルに伝わってきます。

桜の花の香りって、私の嗅覚が残念なのかもしれませんが、
なかなか「わあ桜の香りがぷんぷんする!」と言えるほど胸いっぱいに吸いこんだことがありません。
数年前にやっと、大河津分水という桜の名所で経験しました。
ゲランに「チェリーブロッサム」という桜の香りの香水がありますが、まさにあの香りがふんわりと辺りに漂っていました。夢のようでしたよ。

うた。自分で詠むというのは難しいのですが、良いうたに出会うと、うれしくなっちゃいます。
KUONさまがブログで紹介して下さるお蔭で、「ああいいなあ♪」をちょくちょく味わえる。
なんか、脳内でボサノバの「美味しい水」が流れ始めました。
カピカピの脳みそにも潤いがw
ありがとうございます。

・ヒミツの〇さん。

ありがとうございました。

こういうの本当にありがたいです。また何かの折はよろしく、と、お願い申し上げます。


・laviniaさん。

「美味しい水」なつかしいですね。

短歌を「いいなあ」と読んで下さるのは嬉しいです。「ああいいなあ♪」って。

斎藤史(呼び捨てしにくいけど)は、本物の大歌人。人生いろいろおありだったし生まれつきの資質はもちろんなのですが、楽しい美しいだけの世界ではなくて、独特の斜め加減(中心はぶれずまっすぐ)そこが、微量の毒のように効く世界と言える・・・と思う。

この桜の一首、

うすずみの、と、初めから青空の下の桜には設定していない。

ゆめの中なる、と、現実に見上げている桜、ではないとして。ゆめの中の、ね。

さくら花。一首に平かなが多いのは、漢字を使うとその文字に固定されるイメージってもんがある。それを狙って漢字を使うことも、もちろんあります。

ここはひらがな。夢と現(うつつ)の、どっちなのよとあえて限定しない、ぼんやりとした感じで。

あるひは   夢の中の桜は、或いは、現よりも匂う、と詠んで、最後の「を」が、キメです。

うすずみのゆめの中のさくら花、それは、あるいは(あるいはと言いつつ、実はここは言いきってあります)現実のそれよりも、匂う。匂うを(この「を」は、匂うものを、と言っています。

現実のさくらよりも、匂うものを、と。

慨嘆と言うか。嘆き、諦め、のような感情を示す「を」であって。

実際には桜は、仰るように、そんなに匂う花ではない。ほぼ匂いません。香りとしては無いに近い、淡い香りのようなもの、をまとう、花です。

現実には匂わないさくらが、夢の中では、うつつよりも匂う、とうたう斎藤史は、夢の世界の中に現実らしい真実を見たいのだろうなあ、など、私は考える。

今は人工の濃い匂いがあちこちに氾濫して。せめてもの抵抗に、トイレの窓の外にクチナシや沈丁花を植える。うちはクチナシ植えています。(笑)。

斎藤史の世界は、現(うつつ)と夢の境界を、やすやすと越えている・・・とか書くと、何か違うことになって来そうですが。

現実の厳しさを、詠むことによって、うたの世界で昇華させる方は、多くおられます。一言でいうと、苦しいこと満載の現実でも、カッコ悪い自分はイヤなのって。やせ我慢というか、水面下で必死に足をジタバタしながらの「達観」の目指し方、というか。

美意識。あっさり言えばそうなってしまいますか。この言葉もバーゲンみたいに語られてる。毒舌や。(笑)。

など書きながら、わたし自身は、何年も前から嗅覚が無くなってしまっていて、自分は臭いのか、匂うのか、大丈夫なのか。それが非常に気になります。

過剰に気になるところもあり、かつては、気楽なお香なども楽しんでいましたが、まったく香りがわからなくなってからは、自分の匂いというか、香りを、決めた。

夏はさっぱり系の香りにチェンジもします、が、おおかたは、同じ薫りを使っています。昔から大好きな香り、記憶の中にある香り。いささか恥ずかしいけど、名前自体も好きなので、書こう。(笑)。

KUONのお気には「プアゾン」です。毒。大好きな香り。

でも、ゲランのその香りも、叶うならば感じてみたいです。

なんやかや、ながなが書きました。


こんにちは


すっと頭に入ってこないアホなので
寝る前にシーンとした寝間
枕元の黄色い電球だけで
何度も何度も繰り返し 
情景を想像しながら 
『しがむ』ように読んでます。

学生時代は お気に入りはノートに書き写してました。
その中に斎藤史のうた もありました。
もう忘れてしまってるけど・・・

高校の図書館から
若山牧水 歌集を3冊パクって卒業しました(笑)
大事においてあります。
長年実家においてありますが、
お気に入り歌集ノートと また読み直します〜

また桜の季節になってきましたね
佐保川近くの施設に入ってる方がいるので
暖かくなったら行きたいです〜


春来ては今年も咲きぬなにといふ名ぞとも知らぬ背戸の山の樹

あと幾度 瘋癲と春迎えられるやら

桜、

もうすぐ季節ですね。
夜桜を見に参りますが、
花の精に誘われるが如く、何とも
妖しい魅力に引き込まれます。宵闇に白い薄衣が舞っているような。
耽美なる幽玄の世界を醸し出し
暫し時を忘れます。
満開に咲くも美し、散るも美し。

短い時の中に一生を見せてくれる
花々。
そうそう、私は姥桜。
頑張って木の枝にしがみつく、
可愛い気のない花…
はらはらと散る花を眺めながら。
なんとも滑稽、
いえいえ、好奇心旺盛な花にございます。
この月1日に弟を亡くし、大津皇子を亡くした大伯皇女の御歌に涙しましたが、
18日にはまた、幼稚園から高校まで
一緒でしたクラスメートの1人を亡くしました。
今は、虚脱状態におりましたが、
kuonさまの記事を読みながら、
力を頂いております。

お返事遅くなりました。


・ワッ・タ・シ熟女N~さん。

「しがむ」ように言葉を読む。黄色い電球の下で、し~んとした寝間で。

私より随分お若いけどNさん、まこと昭和のひと。書き出しそのまんま、思い出せば懐かしいあの時代のにほひがいたしまする。

私もノートに、書きに書きました。コピーも無かったし。書くしか無かった。切抜きもたくさんしました、言葉だけでなくグラビア写真や漫画の一こまも貼りました。そのスクラップブック、一冊だけ手元に残していて。

シアワセと言うモノに憧れる、鼻の下にうっすらヒゲのあるような、おそらく思い詰めたような目をしていた、地方の垢抜けない女の子である自分が、蘇って来ます。ロシアの貴族の娘の独白やうつむいている若きアランドロンや、立原道造の詩や牧水のうたなどが、ひしめいているんです。

牧水のうたは、なんとも言えません。酒のうたを読むと、男の人には優しくしなければ、とか、思う。(笑)。また読んでみられたら?。

今日の帰り道、佐保川の川べりを通って来ました。桜はまだ、じっと黙っているだけ。でも、つぼみが盛り上がって膨らんでぱあっと咲ける日を、待っていますよね。ぱあっと咲けばまた、長い待ちの時期に入るのですが。

私もいつも思う、佐保川の桜を、あと何度、見られるかと。

お知り合いが多分ここにおられるのだろうな、という施設の前も通りました。一年に数日、花見のできる、施設。

誰と花を見るか、愛でられるか、なのですね。切ない。

昔のスクラップブックでなく、ここ数年のなぐり書きメモの中にある言葉。

「愛って何よ」

「胸の痛みだ」

至言、名言や。「パリ、ジュテーム」という映画にあったセリフ。

ともかく。今年の桜を、見ましょう。涙が出て来たら、平気な顔してシュッと拭きながら、花を愛でましょう。

来年の花もまた、一緒に見る。ぜったいに見る。とか言うのも、言ってる自分が嘘くさい、ごめんね、でも言う、来年もいっしょに、花を待つ、その次の花を、と。


>春来ては今年も咲きぬなにといふ名ぞとも知らぬ背戸の山の樹

これ・・素敵ですね。どなたのうたですか? 素敵です・・







お返事が遅くなりました。

・ちりぬるを さん。

弟さんを亡くされ、また、幼い頃からのご友人を亡くされてしまった。

おかけする言葉が見つかりません。

私は末っ子で弟はおりません、いたらいいなあと思っていました。まだこれから、の弟さんだったと思います。お辛いですね。

幼なじみはまた、こたえられるでしょうね。これまでに、30代の友人と、共に40代だった同じ寮で若い日を過ごした友人を亡くしましたが、交友関係自体が狭いおかげと申すのもナンですが、ここ10年は、友の死には遭わずに済んでいます。

辛い日々を、なんとか息を詰めてお通りだったと測らせていただきますが、へたれKUONの記事が、いくばくかの慰めになったと言って下さって、何とも言えない思いです。こちらからお礼を申し上げます。

じっと見つめていられないものは、太陽と死、だとも言いますが。思いが深ければ別れの辛さも深い。

もうすぐ花が咲いてくれます、あちらにもこちらにも。とぼけた花やニコニコした花、夢の中にも出て来るような妖しい花も、でも、桜は格別ですね。

  石垣を幹は割りつつ吹く風に吹かれるままに桜舞ひ舞ふ

姥桜、は、止めましょう。

桜観る夜はお洒落して。


お化粧もして、お出かけしましょう。

この世の桜を、見に行きましょう。



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・・・・・


としどしに わがかなしみは ふかくして 

いよよはなやぐ いのちなりけり


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・・・・・・・・・・・・・・・


やはり赤い口紅が好き。


ものすごく唐突ですが、私、口紅(だけ)はシャネルよ。(笑)。

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