KUONのブログへようこそ。

返事の中までKUONです。

  1. 今の思い
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春の前に。



40年前の3月に結婚した。

なぜ、夫と結婚したのかと、去年も今年も訊ねる人がいた。私は、個人としての場にいる時、きちんと相対していると自分が感じる相手の、一つ一つの問いかけに反応してしまうところがある。きちんと答えなければと考え込んでしまうところがある。さらーっとすらーっと、場に応じて流したり茶化したり、適当に進んで行ければ楽だろうか、と、思うことがある。

私がどう答えたか。去年も今年も、これしか言いようの無い、と自分には思われる言葉で、応じたと思う。

「なぜその人と結婚したのか?」の問いに、

「冬眠する気分だったと思います」と。

冬眠?と、相手は怪訝そうな顔をした。

私は25歳になる直前だった。

とてもとても、疲れていた。疲れ切っていたのだろうと思う。

勝手に出て行った養家へ、5年の後に白旗掲げて戻って。養父も養父の妻も、何も問わずに受け入れてくれた、かりそめの職場も養父は与えてくれた、その職場で、エリートのごとく言い囃されていた人が、初対面の一年後に私の夫になった。

ときどき、今日は車で来ていないと言って、現・夫は…A、としておきます…は、養父の家の近くまで歩いてついて来た。自分はこれについてこう考える、というようなことを、話した。はあ、そうですか。私には関心のない話だったので、はあ、はあ、と聞いていた。厄介なことに私は、関心は無くても、コトバじたいに反応してしまう人間であった。

それ、おかしい。

優しいのと優柔不断は違うわ。

善人は逃げる、悪人はやせ我慢でもタタカウ。

その時その場で口から言葉を放り出したのだと思う。とはいえ、思ってもいないことは、出て来ない。出さない。

Aは大変親切で、一般的に言う優しい人で、職場での評判も大変いい人だった。お金持ちの家の長男であるとも聞いた。柔道黒帯のごつい男性で、口数は少ないと言う話だったが、よく喋っていた。私より沢山。

そのAが、自分の母親は料理がうまい、一度お昼時に来ないかと言っている、と言い出し、私は、では、と、乗った。養家は広壮な家を構え力のある家だったが、そういう家の例に漏れず、食生活は極めて質素だった。私は一人暮らしの数年間に口の贅沢を覚えていた、それが、朝はお粥、昼は素うどん、の世界の旧家へ舞い戻っていたのであって。

およばれしようと考えた気持ちの底には、Aという人物への好感があったことは間違いないことだったが、美味しい料理という魔法の言葉にも魅かれたのだった。

大実業家の息子だと聞いていたAの家は、正直に記せば、普通の家だった。名高い住宅街の一角にあって、濃い生垣に囲まれた平屋建ての一軒だった。

そこで2時間ほど、Aの母親に観察されながら過ごした。卓いっぱいに並べてくれた手料理は、確かに種類豊富で手がこんでいて、美味しかった。田舎の味付けですねん、お口に合いますやろか、と問われて、美味しいですと答えた。

食事の途中に、当時はまだ大学生だったAの弟が帰って来て、大変ソフトな対応だった。芦屋で人気の店のケーキを買って来たとかで、勧めてくれたが、お腹はもういっぱいだった。

後で、Aが、おふくろはいいと言っていた、と言った。お茶もちゃあんと頂かはったし、と。初めにお薄が出たのだ。

弟もオーケーと言っていた、と、Aは言った。芦屋のあの店知ってて、がっつかへんかった、と。

何と失礼なと私は腹が立った。人の、どこ見てるんだ。そっちはよくてもこっちは御免だよ、そんなせこいあたりで判断されて「いい」と言われるスジアイは無い。

それに。Aの母親が私に言った、

「この子は、よおけ、お見合いの話がありましてん。今もお二人ほどツリガキお預かりしてますねんけど、今まで本人がまああったく、興味なかったみたいで」

この言葉が、心にひっかかっていて。感じていたのだった、

「こういうヤカラは私はだめだ、キライだ、それに第一、ワタシは、結婚したいと望んでいない」

そのままを私はAに告げた。



そのAと、結局一緒になって、もうすぐ40年。双方の親戚同士の思いが交わらず、一日の内に二回、披露宴をした。二回目の披露宴に履く草履を抱えて生駒山を越えながら、早くも後悔していた。

やっぱり、止めておくべきだったか!。

いろんなことがあった。結婚当時は、いつ出て行くべいか、と、3日に一度くらい考え込んだ。

Aが、3度目に私の頬を張り倒した時、すっ飛んだメガネを拾って顔に乗せて、宣言した。

「4回目があったら離婚です。」

今のところ、4回目は無い。こういう解りやすい話でないところに「本家の長男のヨメ」なんてものの面倒くささがある。

そんなことはもう、どうでもいいのだが。

過去のあれこれはともかく、Aは、結婚生活の半ばのあたりから、私の夫になってくれた。今は私に優しい、誰よりも優しい。

冬眠したくて結婚した。おかしな言葉ですが本当です。冬眠の場を、つくらせてくれて守ってくれて、夫には、感謝しています。

尻切れトンボですが、ここでおしまい。

なぜ結婚したかとか、今は幸せか、とか。聞かれるのはあまり、好きでは無いな、と、今の今は、感じています。

言ってどうなるものではない。





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  1. 2015.03.04 (水) 11:38
  2. URL
  3. ハンナ
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共感

共感という言葉を
これなんだ、と今更噛みしめるような
そんな文章でした、。
私は結婚して27年目を迎えました。
自分から見て、上手くいってる夫婦がアッチモコッチモ離婚してるのに
私は何故?
それを言葉にする文才が私は持ち合わせていないのですが。

春はまだ先?寒いですね。
お体、ご自愛下さい。
  1. 2015.03.04 (水) 15:54
  2. URL
  3. 琵琶
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春の陽に触れて

冬眠から覚めるんですよね万物は

なぜ結婚したのかとか
今は幸せとか
言ってどうなるものでもない話を
春風のように話せる人

私、好きですよ。
  1. 2015.03.04 (水) 17:01
  2. URL
  3. 詠み人知らず
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コメント

私は寄り添ったコメント書けません。
戦慄してしまいます。
あっ阿修羅の如く、です。
春の前どころか、ブリザードやんと思いました。
KUONの心には何が棲む?
  1. 2015.03.04 (水) 21:27
  2. URL
  3. KUON
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@ハンナさん。

何かどこか、共感して下さったのですね。

私は父親と早くに死別し、母親とも12歳で離れて、全く血縁の無い方に大きくしてもらいました。結婚願望は無かった気がしますが、レンアイは無い訳が無かったです。(笑)。子どもを不幸にだけはしてはいけない、したくないと、思い込んでいました。

子育てが終わったぁ、と喜んでいたら、孫育ての主力になるハメになってしまった。孫を邪魔に思うまいと心して、来ました。

そして現在まで来ました。孫は今年、中学2年と小学校の5年生になります。

私は、自分だけの世界を持たせてもらっていい立場になりました。これからがとても楽しみです。


@琵琶さん。

語り合う相手によりますね。

そういう話はしたくない相手、というものも、存在します。私、としてだけ相対したい人間がいるとして、その相手と、家族や家族との日常、みたいな話題になるなら、興ざめ、というものです。だいたいほとんど、家族の話は無しで来たのでした。

あくまで、わがままな私の話です。わがままで集団行動苦手なヒトなんです、わたし。

・・とか言って、相手を辟易させるとか。ごめんなさい、人付き合い、ものすごっくヘタです。顔が丸いので、円満な人だと思っていただいてしまい、後で「!」させてしまうとか・・・人生は不可思議です、不条理です、すみません、今夜はさっき、ラガーミニボトル、呑みました。気分は、すこぶる良好・・・でも、失礼なこと書いた気がします、ごめんなさい、琵琶さん。このまま、お返事とさせていただきます。


@詠み人しらずさん。

戦慄しましたか・・・

阿修羅ですか・・・

KUONの中の「鬼」ですか(鬼、なんてどなたも言うてませんが)・・・

きゃあああ、こわいわ、いやだわ、鬼には鬼が見えるのね~。

ふざけてはおりません、過大なお褒めをいただき、嬉しくてきゃああ。

これくらい言っていただかないのなら。中途半端な「阿修羅」では、本当のことに迫れません。とワタシは思い定めていますので、自分としてはありがたいオコトバとして、頂きました。ありがとうございます。

毎日、もっともっとと鬼度をアップさせたいと願いつつ、シッピツに励んでおります。

恐ろしいほど美しい何かが出来上がったら。生きていてよかった、と、思うでしょう。


@ヒミツのQさん。

コメントをありがとうございます。

これ以上は、ヒミツのコメであの内容で頂いて、お返事のしようが無いのを、お許し下さいね。

他の方々には、それぞれのサイトで、ご自分でお礼をおっしゃってはいかがでしょうか?。私にはどうもできませんので・・・。







  1. 2015.03.05 (木) 08:16
  2. URL
  3. カタツムリ
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こんにちは 
いつも学ばせて頂きありがとうございますm(__)m
はじめてコメントさせて頂きます
冬眠したくて・・・
・・・冬眠させて下さる方と巡り合われて良かったな・・・と共感します

こんな風にご自身を深く掘り下げて向き合われているからこそ 物事の本質に至り 涌き出る言葉と思いました
  1. 2015.03.05 (木) 10:52
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  1. 2015.03.05 (木) 20:49
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  1. 2015.03.05 (木) 21:17
  2. URL
  3. KUON
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コメントをありがとうございます。

@カタツムリさん。初めまして。

いや、なんと申しましょう。実はもっと以前に冬眠からは醒めていたような・・・そして今は、実質的に「自分の時間」が確保され、働いて得たお金を、身内が作った借金にドカンドカンする量が、減ってくれた、という、めでたし、の「解放」が訪れてくれた、とゆーことなのだと思います。

外国へも行きます。1人で。ふふ。配偶者との旅は、それもいいけど、日常の延長になるので。自分がしたい旅もします、物語を幾つか、書けるうちに書きます。

夫は囲碁に打ち込んでいます、よい子で。(笑)。
欲望は、多くは無いが気難しくなるのね、と、思っています。


@ヒミツのDさん。

初めまして、心の優しくなれるコメントをいただきありがとうございます。

ちゃあんと届いています、嬉しく読ませていただきました。読みにくいかもしれませんが、これからもどうぞ、お読み下さいね。いろいろあるけど、今日が「しゅーん」でも、明日は元気でいましょうね。



@ヒミツのRさん。

昔ひとりで暮らしていた頃、帰るとアパートのドアの横に、男の子が(子、と言うても、いっこかにこ、年が下だったような)待っていて、目のくるんとした子でしたが、何を言うでもするでもなく、顔見たらそのまま帰って行っていましたが。

ああいうのも、今ならストーカーと呼ぶのでしょうか。刀を差すみたいに傘を腰に帯びていて、何かあったら助けてあげると言ってくれたんです、が、今はきっと、いいおとーさん7になっているのでしょうね。不思議なヒトでした。

そういう方はともかく、Rさん風のストーカー、申し訳なくも、ありがたく。

私は五黄の寅で、名古屋市で生まれた者ですよ。サイトを発見出来たら、寄らせていただきたいと思います。ありがとうございます。夫とは、ケンカしたこと無いです。最近は少し、口答えする。けっこう気分いいわね、と、にまにましますね。争うとめんどくさいだけの、それってどうなの、の「従順」ではありますかしら。(笑)。

  1. 2015.03.06 (金) 05:28
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  1. 2015.03.07 (土) 16:19
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  1. 2015.03.08 (日) 11:51
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  3. 主治医は吞み友・ウナ
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夫婦でふ~ふ~(鍋?)

お早うございます
ご成婚四〇年ですか
ならば一緒かも
数えた事もありませんでした
私は数字には意外と無頓着でして
家人の誕生日はいまだにあやふやです
KUONさんのブログはことのほか
家人のお気に入りであります
毎日の『ポチィ』は彼女がしております
オラの夫婦の定義は
『湯豆腐を一緒に食べる』であります
同じ釜のご飯を頂く事が
家庭円満の秘訣ではないのでしょうか
いつもの記事のアップに感謝!
で、あります。
  1. 2015.03.08 (日) 21:01
  2. URL
  3. KUON
  4. [ edit ]

お返事遅くなりました。

@Lさん。

そうなんです、小さな素敵な美しい記事、読ませて頂いてます。

またお会いできるといいですね。その時は、例のパン、手に入れておかないと、ですね。(笑)。


@ヒミツのDさん。

読みにくいなか、どうもありがとうございます。

自分へのご褒美の一人旅。オーケーですね、素敵です、たっぷり楽しんでいらして下さいね。

美味しいものいっぱいあるところですしね。い~な~。(笑)。


@実はノロケ屋かよ・ウナさん。

まあ。ご家人が、私のブログを、お気に。ですって?

でわ。先日の、中也ショックの折に。デストロイヤーだのくそったれだの、そのご家人のオットさん(=ウナ)を、ぼろくそにボコボコにしたKUONを、喜んでお読みになった?

ま、まぞですか。いや、まじですか。ほ~。

でも、フン、わたし悪くないですからね。あの節はどーも、なんて言いませんからね。確かに実生活では、湯豆腐ふ~ふ~も薄切り肉しゃぶしゃぶもあるかも知れませぬが。

家族の匂いをさせたくないKUONですの。そーゆーキャラは設定しておりませんの。まして今は「切ない恋」なんてどうしようもない思いを、お内緒ですが物語に紡いておる身。

あくまでわがまま自分勝手唯我独尊のわたくしでいる所存ですので、ふ~ふ~円満の勧めなどは、お控えの方が、ぎったぎたにならないでお済みかと存じますわ。お判り?ほほ。


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プロフィール

KUONの久遠

Author:KUONの久遠
     ・・・・・・・・・・・・・・

四十年以上住み慣れた奈良の地を離れ、海の近くへ越してまいりました。

海の見ゆる高層の部屋に耳遠き
夫(つま)とふたりの暮らし始むる

明確に、残生を意識します。余分なあれこれはもう要りません。
シャネルの赤いルージュは変わらず。生意気なままの私でいたい、いようと願っております。

    ・・・・・・・・・・

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