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返事の中までKUONです。

  1. ことばのたのしみ
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Ⅸ  正午なり

シリーズⅨ   正午なり   

        今日の一首   「 思ひ出のいずこにも無きひとことをいただきて今の胸の温もり 」



入って来たのは3人です。

大きい女の人と、大きい女の子と、小さい男の人です。

のっぽん国のこーたいしだ。ひでんかだ。むすめだ。周囲がざわざわしました。

フロアに入って3人は、あたりをぐるっと見回しました。

両手を揃えてじっと頭を下げたままの店員たちの姿は見えないように、ひでんかとむすめは歩き回って、娘は黙ってナッツの缶に手を伸ばし、落としてしまい、おばさんはダハハっと大きな声で笑うと、新しい缶を取りなさい、落としたものなんか買わないのよ、と言いつけて、自分はチーズの塊を掴みあげました。二つ三つ掴んで、重さを確かめて、二つをどすんと戻しました。

これにするわ。おばさん・・ひでんかは、後ろにいる人に渡そうとして、腕だけ後ろへ回して、あれ、という感じでやっと、首も回しました。

「お付きの方はフロアの外に移動していただきました」

さっき棚のじいさまが「SP」だ、とつぶやいた中の一人。黒い服を着て固そうな体の男の人が、サッと3人の前に立って、小さい男の人・・・ええと、こうたいし?を、見下ろして言いました。

「きっちり1時間、この地下は封鎖されました。誰も入ることは出来ません」

勝手に出ることも出来ません。静かに言いました。

え。え? とこうたいしは、笑うみたいな困ったみたいな顔になって、両手を、ポケットのあたりでパタパタさせました。誰かを振り向いたけれど、欲しい誰かはいないようです。そ。それは。慌てながら笑っています。

「それは予定に無かったですね。聞いておりません。ここで買い物をして、それから、とうと御苑へ参りまして、娘の友人のご両親がたと、私の誕生祝いのランチをする予定なのです」

上を見上げながら告げて、娘の方を見て、

「ちこくだめぱぱ」

言うのに、にまにま頷いて、

「ジャムが欲しかったのでしょう。あそこにあるから、欲しいモノ幾つでも取っておいで」

言うからジャムは、震え上がりました。ジャムって。

あの、あそこにいる女の子が、私を買うの? 。

「ちこくだめ」

女の子は、にらむみたいにじっと、どこかを見ているだけです。動きません。でも、傍にいるおばさん・・・ひでんかが

「まぁたぁジャムなの。ちっとしか入ってないじゃないの、あのジャム。瓶が重いばかりで、でも、ラクコたちは美味しいとか言ってたから、買おうかしらぁ、1、2ダースほど買って・・・あら」

ようやく私の方へ寄って来ようとした娘が、優しい感じではあってもSPにしっかりストップをかけられると、おばさんは急に、ものすごく恐ろしい顔になりました。何をするのっと、吼えました。固そうな体のSPが、今日は話を聞いていただきます、と言いました。固い声でした。おばさんはこーたいしに、

「何をさせておくの。何を言ってるの、この私に。いいかげんにさせなさいよ。ショッピングに来てこんな目に遭っているのよ、黙らせなさいよ」

こうたいしは、ぎぎっと睨まれて、うんうんうなずいてからSPを見上げて

「あの、あのうです、よく分からないのですが話は私が伺います、妻と娘を、どこかへ座らせてやって下さい、妻は体調の変化がありまして怖いのです、いや体調が怖いのですよ、それで、えと、配慮を要求します」

なんやあいつ、ヘタレやなあと、お好み焼きの粉、が、ふふんと笑います。見えないけど言葉でジャムにも解りました。

「ここでは椅子をご用意できません」

SPの声に、なになのよ、と、きいっと、おばさん・・・ひでんかの声。

「直立にお慣れになられるがよろしいと存じます。このまま現在のお立場でおられるおつもりなら、いささかの間を、直立して過ごされる鍛錬は必定」

SPの言うことは難しくなって来ていますが、ジャムには、そうだそうだと背後で重なる声が、その通りのように思えます。

「1時間の間も立ってお過ごしになれないなら、私がいま申しますごとく、そのお立場から去られるがよろしい」

「はああああああああああ?」

「大切な場に、立っておられるさえ無理。儀式のイロハさえ為し難きお方は、本来ならばおん自らお退きになるが望ましいのは火を見るより明らか。ただそれのみを申し上げたいがため、かかるごとき場を設定いたしました。

御身方にのっぽん国の未来は託せません。断固、無理だと申し上げます。願うはただ一事のみ。お退きいただきたい」

フロアの中は、しーんと静まり返っています。気がついてみれば、大小3人の一家とSPたちの他に、そこには誰もいません。

「お父さん!」

やがておばさんの大きな声が響きました。

「お父さん。だから今朝、電話の充電切れてたの、何とかしておくべきだったのよ、連絡も何も、取れないじゃないのこんな時に」

「え。だだだだって、今日はずっと一緒にいるから、大丈夫と・・・」

「あなたにはかけるとこ無いでしょうけど、私には電話の相手はいっぱいいるのよ」

「えええ。でででも、今日は朝から親子で、あなただって、今日はチーズ買うって、それでランチで、お茶までずれてゆっくりして、夜はお義父様たちと、らんらん亭で・・・その予定だったから」

「言い訳はもういい、言い訳ばっかりあなたって。こんなところでこんな目に遭って、何の役にも立たない人なんか」

・・・おばさんが、こうたいしを怒鳴りつけている傍で、

お別れになる手もございますね。静かに固い声の人が息を吐きました。

「でんかの方から、切れる話は出せますまい。赤子にもわかる道理でございます。一生かけてお守り、なんぞと、言わせてしまわれましたのですからね。手も脚も出ないと言うのはあのごとき言質。ご身分お立場もございますゆえ。しかし。

ひでんかが、人目はばかることも無くこうたいし殿下を罵倒なさる。由々しきことにてございます。それほどまでにご不満ならば、と、私どもは」

黙りなさい!。ひでんかは今度はSPを怒鳴りつけます。他に沢山いるSP・・・なのかしら?・・・は、ぐるりと周囲を囲んでいるばかりで、何も言わず動かず。息もしていないように見えます。ただ、ここから出しませんバリヤーは、すごい。と、ジャムにもわかってしまうくらい。

「黙りなさいよ、あなた。名前教えなさい名札見せなさい。あいこくゆうじ? 変な名前。顔、ゆがんでるし。あ、顔のことはまあ、でも何の権利があってこんな。この私を」

「何の権利をも有しません。そう申せばそうであり、私にはどんなことも出来ないと言うことは無い、とも、申せましょう」

「はあ? 何言ってるの? 」

「ご利発な妃殿下には解っていただけませんか」

「とにかく私はここを出ますよ。もうずいぶん時間も経っています。デパートの開店時間過ぎていると思いますわ。客も文句を言い始めているでしょうし、何か不審なことがあれば、私たちが雇っているくっきょうの者たちが、踏み込んで来ることになってます。すぐに全員、逮捕されましてよ。こんなことして。新聞だって黙っておりません、週刊誌もテレビも、すべてどこも、私の・・・ワタシの父を敬愛して止まない。。。っていうか、まあそのあたりはワタクシ、人品を自ずから下げる言動は慎みたいと思いますのですけれど、とにかく、黙っちゃいないわよ、解ってるの、解ってやってるわけぇ?」

ジロリと横目で、固そうな体のSPを眺めておばさんは、ふん、と鼻を鳴らしました。

娘は横で、ちこくだめ、と、繰り返しながら父親のスーツの裾を引っ張っています。ランチとやらには、よほど待たせたくない誰かが呼んであるようです。ジャムにはわからないせかいです。

娘の肩を抱くようにぽんぽん叩きながらこうたいしは、おばさんを見、SPを見、ちろちろ目を泳がせながら、じっと、まっすぐ立ったままです。

じぶんたちでやとってるくっきょうなものたちって、おばさんいってるけどそれも、ノッポン国のこくみんがおさめてる税金なんだぜ。そんな声が聞こえてきます。

「捕まるわよ、あなた」

ふふん。おばさんは、とってもバカな人の顔になりました。

ジャムは、今やすっかり、SPの味方です。頑張れ~、の気分です。

・・・捕まるのが恐ろしくて、あなた様のごとき訳知らずの方に話をしようとは、もとより考えておりません。SPは、少し笑いながら、おばさんを見つめました。こうたいしより年上のようですが、かっこいいオジサンです。

「すべての覚悟は定めて、計画をしてまいりました。

1年前から今日の日に、向かって参りました。ひたすら、人心を集めさせてもらって参りました。ひでんか。ご存じないかもしれませんが」

と、SPは、優しい柔らかい目になって、おばさんに、話すのでした。

「太陽は、あなた様の上にだけ現れて、あなた様のみを照らすものにてはございません」

おばさんは、ふん、と鼻の先っぽを上に突き上げています。

「誰の上にも陽は照っているのでございます」

「早くここから出して。私だけでもいいわ、とりあえず。それか、電話かしなさい」

「報道の人間も政を行う者も、このデパートの株を所有する者も。社員も派遣の社員も、顧客も司法の関係者にも。あなた様の惨状を見難く感じる者がおります。国のため、憂うる者もおります。日ごろは微細な力であって、のっぽんはこれからどうなって行くかと、心痛めつつも、如何にするもままならぬと、強き諦念にに身を委ねておりました者が、ひでんか」

「うるさいわアタマが痛いわ」

「・・実際に、おります。そして、この美しいのっぽんの、これからのために、微力ながら叶うならばなんらかの力を、と、望む者が、いるのでございます」

「何言ってるか解らないわ。むずかしいこと嫌い、のど渇いた、お腹も空いて来た、脚が棒になって来たわ、私をこんな目に遭わせて、どうなるか覚えていなさい」

「やはり、そこまでのおバカであらせられますか」

「考えると、頭の中をぶんぶんハチが飛ぶの」

「そのごとき舐めた態度で、お考えなしでこの先も参られますか」

「私にどうしろって言うのよ」

「ひでんかならば、おん自ら、お考えをいただきたく存じます」

「じゃあ父をどうやって、救ってやるの」

「・・・」

「がんじがらめよ、父だって」

「お身の続く限りのことです」

「どーゆー意味よ」

「俗に申すに、まともに生きる天が下、なれば、お天道様とごはんは、付いて回ると」

「説教は嫌いなのよ私。本当は、いろんなこと何も解らないの、何聞いてもわからない、ただ、考えさせないで欲しいのよ」

・・・困りましたねえ。

SPは、本当に困っているみたいに、う~んとうなってぐるぐる首を回した。

ひでんかは、脚が疲れたのか、片方ずつぶんぶん振り回し始めた。靴が一つ、飛んだ。けんけんして取りに行ってひでんかは、すぱん、と履いた。

こうたいしは、立ち尽くしていたが、何か気づいたように、周囲を取り囲んでいるSPたちに、笑顔を振りまき始めている。

ちこくだめ。ぱぱ。気になるのか娘は、突っ立ったまま目が据わって来ているようだ。

あと、10分だ。

背後で声がする。



                              続く・・・でないと・・・続きます。











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  1. 2014.02.07 (金) 17:15
  2. URL
  3. メゾピアノ
  4. [ edit ]

KUONさん

昨日はメルヘン風のかわいいお話と思いきや急転直下、今日はサスペンスですね。
デパ地下にてSPさんたちによるクーデター勃発ですね。
どこまでも強気のザツコさん
そして、どこまでもウスラなこうたいし
二人の運命や如何に?
最後の「あと10分だ」の意味するところは
とっても気になります。
  1. 2014.02.07 (金) 18:13
  2. URL
  3. ワハハ
  4. [ edit ]

交代しさん、、 めちゃリアル。
わろた!
  1. 2014.02.08 (土) 14:49
  2. URL
  3. 藍色
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いい!

気ん持ちイイ~~、SPガンバレ!
(このSP、タモ神さん?とか連想してしまいました。)
言ったれ言ったれ、もっと言ったれ!

ジャムも寸でのところで、ザツコに買われず良かったね!

「おきゅう」には爆笑してしまいましたが、こういう事が起こるなら
こちらに引っ越したいです。
  1. 2014.02.11 (火) 20:21
  2. URL
  3. KUON
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メゾピアノさん。

な~んにも考えずに、思いつくまま行ってる・・・でも、癖のようなもので、後で思えば伏線のごときになっていたあたりは用いてしまう・・・楽しくて書いてました。もっと書きたくなったので、どーしよーかなあ、と。

あの夫婦って、キャラが立ってゐるので、想像力は喚起されます。でも、国としては迷惑な・・・ただ、あほうのかなさしみたいなものを、どうしても、求めてしまう・・・フィクションだからいいけど、こういう現実は、困りますね。
  1. 2014.02.11 (火) 20:24
  2. URL
  3. KUON
  4. [ edit ]

ワハハさん。

読んで下さりストレートなコメント下さり、嬉しかったです。

リアルでしたか。笑。不敬罪が無いことに感謝、です。

また面白ければ楽しんで下さいね。そして退位を願いましょう。
  1. 2014.02.11 (火) 20:30
  2. URL
  3. KUON
  4. [ edit ]

藍色さん。

おもしろがって下さってありがとうございます。

ホント、馬鹿ですよね。

初めはそうでもなかったSPさんのイメージ、藍色さんのコメ読んで、確信的にタモ様になりました。

これからは「フェルゼン伯爵」になったりするかも~、とか。フェルゼン伯とは、ルイ16世の妃の恋人だった、スゥエーデンの貴族で。漫画が大爆発の人気だった、ベルばらの登場人物です。

実在の人でもあったらしい。

どうにでもして、ザツコのバカっぷりを晒してやりたい、ギリギリ。


「おきゅう」☆には、いろんなキャラが存在するかも・・・です。

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プロフィール

KUONの久遠

Author:KUONの久遠
     ・・・・・・・・・・・・・・

四十年以上住み慣れた奈良の地を離れ、海の近くへ越してまいりました。

海の見ゆる高層の部屋に耳遠き
夫(つま)とふたりの暮らし始むる

明確に、残生を意識します。余分なあれこれはもう要りません。
シャネルの赤いルージュは変わらず。生意気なままの私でいたい、いようと願っております。

    ・・・・・・・・・・

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